2018年1月8日月曜日

かっこいい文章を書くなら、ハードボイルドで


「かっこいい文章」や「男らしい文章」を書きたいのなら、ハードボイルドのテクニックがオススメです。

 ハードボイルドの書き方をとりいれれば、男らしくてかっこいい文章になります
 しかも、ハードボイルドの文章はリズミカルで、とても読みやすいです。

 文章を書く人にかぎらず、ハードボイルドの言葉の使い方は、
「渋くキメたい」
「自信に満ちた『できる男』だと思われたい」
 という人にとっても参考になると思います。


ハードボイルドの文章スタイル


 ハードボイルドの「文章スタイル」について、ご説明いたします。

 と、その前に――

 ハードボイルドに対して「スタイル」という言葉を使っていることに、抵抗を感じる人もいるかもしれませんね。

 ハードボイルド作家自身が、
「ハードボイルドとはスタイルではなく、生きざまだ」
 ということをたびたび語っているので、「スタイル(形式)」として確立しにくくなっているんですね。


 とはいうものの……

 ハードボイルドは、その「スタイル」こそが優れていると、僕は思っています。

 ですので、今回はあえてハードボイルドを「スタイル」と捉えたうえで、お話ししていきます。


ハードボイルド・スタイルの特徴


 ハードボイルドの文章を簡単に言うと、
「短く、簡潔」
 ということに尽きると思います。

 一文一文を短く――つまり、文のはじめから句点(。)までを短くして書くことが、ハードボイルドにおける基本ルールと言えます。
 数行におよぶ長文であれば、短く細切れにして複数の文にします。

 たとえば、作中にこんな文章があったとします。

**********
 その男は見た感じは30歳前後で、痩せていて眼光が鋭く、睨むような眼差しで私を見すえたまま、右手を差しだして握手を求めてきた。
**********


 ふつうの文章ですよね。
 これをハードボイルド風にすると、こんな感じになります。

**********
 その男は、見た感じは30歳前後だった。
 痩せている。眼光が鋭い。睨むような眼差し。
 男は私を見すえたまま、右手を差しだした。握手を求めてきたのだ。
**********

 たったこれだけで、かなり「男らしい文章」になりましたよね。

 もとはひとつの文だったものを6つの短い文に分割しています。
 この例では少し誇張して書いていますが、ハードボイルドの基本はこれです。

 一文一文を、短く簡潔に書く――
 それを心がけると、文章が男らしく、かっこよくなります


「体言止め」も活用する


 文を短くするのに必要であれば、「体言止め」も使います。

体言止め」とは、名詞で文を終わらせる書き方のこと。
   気配もなく現れた謎の青年。
   渾身の力を込めたアッパーカット。

「体言止め」を効果的に使っているハードボイルド作家といえば、やはり北方謙三(きたかた・けんぞう)先生だと思います。

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 短剣。
 白い陶製の柄(つか)。
 彫金(ちょうきん)の飾りのついた革の鞘(さや)。
 吊り紐をつける金具。

出典:『檻』 北方謙三:著 集英社文庫(1987年)
原文に3回改行を加え、( )の中にふりがなを補足するなどして、ネット上(横書き)で読みやすいように体裁を整えてあります。

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 短剣の見た目を描写している場面ですが、4つの文、すべて体言止めです。
 もしこれを体言止めを使わずにひとつの文章で書いたら、こんな感じになると思います。

**********
 その短剣は、柄の部分が白い陶製で、革の鞘の部分には彫金の飾りがつけられ、吊り紐をつける金具が施されている。
**********

 北方先生が書いたように、体言止めを使って文を短く区切ったほうが、明らかにリズムと歯切れが良いですよね。


ハードボイルドの文章はアクション・シーンに最適


 ハードボイルドの手法が本領を発揮するのは、なんと言ってもアクション・シーンです。

 小説は「活字のメディア」ですので、基本的にアクションの描写には向いていません。
 言葉で表現するので、どうしても説明口調のようになってしまい、スピード感がうまくだせないんですね。

 ですが、ハードボイルドのテクニックを使うと、文章にスピード感がでます。

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 ちがう通りに出た。また悲鳴が聞こえた。
 鞘に収めた短剣の柄を握ったまま、上着を脱いだ。
 返り血がひどい。走り続けながら、上着で顔を拭いた。
 また路地に入った。追ってくる。目がくらみそうだった。

出典:『檻』 北方謙三:著 集英社文庫(1987年)
ネット上(横書き)で見やすいように原文に改行を3回加え、体裁を整えてあります。
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 ものすごくスピード感ありますよね。
 文章でアクションを表現するのに最適な手法だと言えます。


自信を感じさせる文章が「男らしい文章」


 ほかにも、文章で「男らしさ」をだすには、

  • ストレートな言い回しをする
  • 断定形を多く使う

 といった手法があります。


「断定形を多く使う」というのは、
「~であろう」
「~かもしれない」
 といった仮定の言いまわしや、
「~された」
 という受け身の表現をさけることです。

 その代わりに、
「~だ」
「~だった」
 と、言い切ることを心がけます

 それによって、男らしく、自信を感じさせる文章になります。


ハードボイルド作家が書けば、花屋さんだってかっこいい


 小説家を志している人のなかには、
「主人公の職業を、どう設定したらいいのか?」
 ということで頭を悩ませている人もいるかと思います。

 魅力的な主人公には、魅力的な職業が不可欠――
 そう思っている人がほとんどだと思います。 

 探偵、刑事、スパイ――
 危険ととなり合わせの非日常的な職業でなければ「かっこいい主人公」は描けないと思いがちですが……

 実際は、そんなことありません。

 ハードボイルドの表現テクニックを身につけていれば、どんな職業であれ、かっこよく描けます

 さきほど紹介した北方謙三先生の『檻』という作品では、主人公は裏社会から足を洗った「スーパーマーケットの店長」です。

 さらに、北方先生の『錆』という作品では、主人公の職業は花屋さんです。

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 薔薇(ばら)には、やはり棘(とげ)があるものだ。もう一度思った。
 薔薇を買うなら、棘まで買え。
 つまらないこだわりだった。

出典:『錆』 北方謙三:著 光文社文庫(1988年)
原文に改行を2回加え、( )の中にふりがなを補足して、ネット上(横書き)で読みやすいように体裁を整えてあります。

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 かっこいいぜ、花屋さん!

 腕のいいハードボイルド作家にかかれば、どんな職業のキャラクターだってかっこよく描かれます。

 すごいよなぁ、北方先生は……。


ハードボイルドのテクニックで表現の幅が広がる


 ハードボイルドのように短く簡潔に書かれた文章は、リズムと歯切れが良いため、とても読みやすいです。

 また、日常の会話でも、短く簡潔に話すと、相手に伝わりやすい話し方になります。
 男性の場合は、言葉づかいが「男らしい」という印象を与えます。

 このハードボイルドのテクニックをしっかりと身につけて、表現の幅をさらに広げていきたいものですね。


ハードボイルドに関するほかのお話
推理小説の対極はハードボイルド?

よろしければ、こちらもご参考ください
「対決シーン」で臨場感をだすための文章テクニック(本条克明の場合)

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