今回は、三点リーダー(……)と同類の記号としてあつかわれている、
「ダッシュ記号(――)」
について、お話しいたします。
※三点リーダー(……)については、こちらをご参照ください
→三点リーダーの書き方や使い方には、業界の慣習がある
ダッシュ記号の基礎知識
日本語の文章は、ダッシュ記号(――)を使わなくても問題なく書くことができます。
実際、日本の作家(小説家)の多くはダッシュ記号(――)を使っていません。
そのため、ダッシュ記号(――)には業界の慣習や正式な使い方といったものはないんですね。
ですので、ダッシュ記号(――)の使い方について「こうだ」ということをお教えすることはできないのですが……。
ただ、僕自身はダッシュ記号(――)を多用する作家なので、
「本条克明の場合は」
ということを前提に、代表的な使い方を「参考例」としてご紹介したいと思います。
ページ内目次
・ダッシュ記号の使い方は工夫しだい
一般的な文章ではほとんど使わない記号なので、
「ワープロで、ダッシュ(―)の文字をだす方法がわからない」
という人もいるかと思います。
そういう場合は、ローマ字変換の状態で、
というやり方でだすことができます。
※「だっしゅ」と打ち込んで変換、という方法でもだすことができます。
ダッシュ記号は、2文字でひとつの記号です。
ですので、『―』を2文字つづけて ―― というふうに表記します。
僕の場合は、―― という2文字ぶんの表記を d という読みで単語登録しています。
※「d」は「ダッシュ」の頭文字から。
このように登録しておくと、Dのキーを打って変換するだけで ―― をだせるので、かなり楽(らく)です(笑
ダッシュ記号(――)は、言葉がとぎれたり、沈黙することによってできる『間(ま)』を表現するときに使うのがもっとも一般的です。
「それって、三点リーダー(……)と一緒じゃないの?」
と思った人もいるかもしれませんが……。
そうなんですよ(笑
言葉で説明すると、三点リーダー(……)とおなじものになっちゃうんですよね。
ただ、作家のほうではちゃんと使い分けをしています。
三点リーダー(……)のほうは、言葉が尻すぼみになっていくというか、動揺したり考え込んだりして言葉がなくなる(だまり込む)ことによってできる『間』をあらわすときに使います。
「そんな……オレのほうこそ、ありがとうございます」
ダッシュ記号(――)の場合は、
言葉を言い切ったり、
話している途中でふいに言葉をとめたり、
言葉を途中でさえぎられたり、
そんな感じでスパッと言葉がとまったときにできる『間』をあらわすときに使います。
※『スピードでパワーファイターに勝つ』(第四章 カツオはいい先輩をもったな)より抜粋。
※『きみの微笑みが嬉しくて』(第一章 俺の好きな人……)より抜粋。
※『スピードでパワーファイターに勝つ』は長編ボクシング小説です。WEB小説として『月尾ボクシングジム物語』というサイトで公開しています。
→目次 『スピードでパワーファイターに勝つ』
※『きみの微笑みが嬉しくて』は中編恋愛小説です。WEB小説として『恋とは幸せなものなんだ』というサイトで公開しています。
→目次 『きみの微笑みが嬉しくて』
「かぎ括弧(かっこ)をとじて台詞(せりふ)をひとまず終わらせるけど、この人物の台詞はこのあともつづきます」
ということをあらわすときにも、ダッシュ記号(――)を使うことがあります。
※『スピードでパワーファイターに勝つ』(第一章 オレのほうが速く移動しているはずなのに……)より抜粋。
※『きみの微笑みが嬉しくて』(第三章 よかったら、今日も一緒に)より抜粋。
「前の文の内容を直接的に受けて次の文が語られるときに、前の文と次の文をつなげる」
という使い方もあります。
※『スピードでパワーファイターに勝つ』 (第三章 体が小さいからこそ、世界一も夢じゃない)より抜粋。
※『きみの微笑みが嬉しくて』(第二章 賢策の変化)より抜粋。
「言葉を途中でやめて、別の言い方で説明する」
という場合も、ダッシュ記号(――)を使うことがあります。
※『スピードでパワーファイターに勝つ』(第一章 サークリング・テクニックの利点)より抜粋。
見えない打撃のことを、まぼろしの拳――ファントム・パンチと言う。
※『スピードでパワーファイターに勝つ』(第六章 異なるスピードの概念)より抜粋。
「ダッシュ記号とダッシュ記号のあいだに、補足の説明や注記を書く」
という使い方もあります。
この書き方、海外小説(翻訳小説)ではよく見かける手法です。
とうぜん、文章表現として正しい書き方です。
ですが、日本では上記のようなかたちでダッシュ記号(――)を使う作家はほとんどいません。
補足の説明や、注記をいれる場合は、
( ) 丸括弧
を使うのが一般的だからです。
※『スピードでパワーファイターに勝つ』(第一章 サークリング・テクニックの利点)より抜粋。
丸括弧が主流ですので、「補足説明をダッシュ記号ではさむ」という書き方は、日本の小説ではほとんど目にしません。
けっしてまちがいではないのですが、日本の読者は見慣れていないので、やはり丸括弧で表現したほうが無難(ぶなん)だと思います。
「小説で実際に使われているダッシュ記号の例を、もっと知りたい」
という人には、海外小説(翻訳小説)を参考にすることをお勧(すす)めします。
日本の小説よりもダッシュ記号(――)が多く使われていますからね。
プロの作家がどうやって使っているのかを学ぶのに最適だと思います。
もし、
「海外小説って言われても、どの作品を読めばいいのかわからない……」
という場合は、↓この作品をお勧めいたします。
※フィリップ・K・ディックは「鬼才」と呼ばれたアメリカのSF作家。浅倉久志先生は日本を代表する海外SFの翻訳家です。
ダッシュ記号(――)の代表的な使い方は、この1冊でほとんど学べると思います。
僕自身、作家修業中にこの本を摸写(もしゃ)したときにダッシュ記号の使い方をおぼえました。
勉強になるだけではなく、作品自体、とてもおもしろい小説です。
やっぱり、僕としてはこの小説がいちばんのオススメですね。
日本では、正式なダッシュ記号(――)の使い方や、業界の慣習といったものはありません。
正式な決まりがないので、「独自の使い方」が可能な記号でもあります。
おそらく、工夫しだいでもっといろいろな表現ができると思います。
作中でダッシュ記号(――)を使うときの参考になさってみてください。
※執筆記号に関するほかのお話
→疑問符(?)や感嘆符(!)を使うときは、業界の慣習がある
→三点リーダーの書き方や使い方には、業界の慣習がある
※摸写に関するお話
→模写(もしゃ)は、優れた文章練習法
ワープロでダッシュをだす方法
一般的な文章ではほとんど使わない記号なので、
「ワープロで、ダッシュ(―)の文字をだす方法がわからない」
という人もいるかと思います。
そういう場合は、ローマ字変換の状態で、
JISキーボードの上段右側にある「ほ」のキーを押して長音の文字をだし、変換
というやり方でだすことができます。
※「だっしゅ」と打ち込んで変換、という方法でもだすことができます。
長音とかハイフンとか似たような記号がほかにもでてきますが、それはみなダッシュとは異なる文字(記号)です。
ダッシュは、マス目の端(はし)から端まで、まっすぐ線をひいた記号です。
ダッシュは、マス目の端(はし)から端まで、まっすぐ線をひいた記号です。
ダッシュ記号の表記のしかた
ダッシュ記号は、2文字でひとつの記号です。
ですので、『―』を2文字つづけて ―― というふうに表記します。
************
「いや、あれは睨(にら)んでいるというより――」
************
僕の場合は、―― という2文字ぶんの表記を d という読みで単語登録しています。
※「d」は「ダッシュ」の頭文字から。
このように登録しておくと、Dのキーを打って変換するだけで ―― をだせるので、かなり楽(らく)です(笑
ダッシュ記号の使い方 (参考例)
『間』をあらわすのに使う
ダッシュ記号(――)は、言葉がとぎれたり、沈黙することによってできる『間(ま)』を表現するときに使うのがもっとも一般的です。
「それって、三点リーダー(……)と一緒じゃないの?」
と思った人もいるかもしれませんが……。
そうなんですよ(笑
言葉で説明すると、三点リーダー(……)とおなじものになっちゃうんですよね。
ただ、作家のほうではちゃんと使い分けをしています。
三点リーダー(……)のほうは、言葉が尻すぼみになっていくというか、動揺したり考え込んだりして言葉がなくなる(だまり込む)ことによってできる『間』をあらわすときに使います。
************
「まさか、こんなことになるなんて……」
*
「そんな……オレのほうこそ、ありがとうございます」
************
ダッシュ記号(――)の場合は、
言葉を言い切ったり、
話している途中でふいに言葉をとめたり、
言葉を途中でさえぎられたり、
そんな感じでスパッと言葉がとまったときにできる『間』をあらわすときに使います。
************
「べつにいいですけど、でも、なんで俺に――」
そこまで言って、星乃塚は言葉をとめた。
滝本トレーナーの意図(いと)を察したからだ。
そこまで言って、星乃塚は言葉をとめた。
滝本トレーナーの意図(いと)を察したからだ。
※『スピードでパワーファイターに勝つ』(第四章 カツオはいい先輩をもったな)より抜粋。
*
「え、セーチくん、女の子のこと考えてたの!? ってことはセーチくん、もしかして好きな人いるの? 誰、誰なの? ねえ、オレたちには教えてくれたっていいじゃ――」
俺は裏拳を額(ひたい)にお見舞いしてカツオをだまらせた。
いい加減、空気読め。へたれのくせによけいなことばかり言ってると、そのうち痛い目にあうぞ。
俺は裏拳を額(ひたい)にお見舞いしてカツオをだまらせた。
いい加減、空気読め。へたれのくせによけいなことばかり言ってると、そのうち痛い目にあうぞ。
※『きみの微笑みが嬉しくて』(第一章 俺の好きな人……)より抜粋。
************
※『スピードでパワーファイターに勝つ』は長編ボクシング小説です。WEB小説として『月尾ボクシングジム物語』というサイトで公開しています。
→目次 『スピードでパワーファイターに勝つ』
※『きみの微笑みが嬉しくて』は中編恋愛小説です。WEB小説として『恋とは幸せなものなんだ』というサイトで公開しています。
→目次 『きみの微笑みが嬉しくて』
台詞がまだ終わっていないことを表現する
「かぎ括弧(かっこ)をとじて台詞(せりふ)をひとまず終わらせるけど、この人物の台詞はこのあともつづきます」
ということをあらわすときにも、ダッシュ記号(――)を使うことがあります。
************
「やつは速い。だが――」
烈は強気な口調で言う。
「おれには通用しない! すでに攻略した!」
烈は強気な口調で言う。
「おれには通用しない! すでに攻略した!」
※『スピードでパワーファイターに勝つ』(第一章 オレのほうが速く移動しているはずなのに……)より抜粋。
*
「あのさ――」
俺は、おもいきって言った。
「よかったら、今日も一緒に帰らない?」
俺は、おもいきって言った。
「よかったら、今日も一緒に帰らない?」
※『きみの微笑みが嬉しくて』(第三章 よかったら、今日も一緒に)より抜粋。
************
文と文をつなぐ
「前の文の内容を直接的に受けて次の文が語られるときに、前の文と次の文をつなげる」
という使い方もあります。
***********
才能、能力、志(こころざし)の大きさ――どれをとっても、すでに超高校級だという自負(じふ)があった。
※『スピードでパワーファイターに勝つ』 (第三章 体が小さいからこそ、世界一も夢じゃない)より抜粋。
*
そんな感じで俺は、ひとりぼっちだった賢策に話しかけたんだ――すぐに後悔したけど。
※『きみの微笑みが嬉しくて』(第二章 賢策の変化)より抜粋。
***********
ちがう言い方に切り替える
「言葉を途中でやめて、別の言い方で説明する」
という場合も、ダッシュ記号(――)を使うことがあります。
************
左側に移動するときは、後ろの足――右足で床(ゆか)を蹴って移動する。※『スピードでパワーファイターに勝つ』(第一章 サークリング・テクニックの利点)より抜粋。
*
見えない打撃のことを、まぼろしの拳――ファントム・パンチと言う。
※『スピードでパワーファイターに勝つ』(第六章 異なるスピードの概念)より抜粋。
************
補足説明をとじる
「ダッシュ記号とダッシュ記号のあいだに、補足の説明や注記を書く」
という使い方もあります。
************
カツオは両腕のガードを高くあげて構え、左まわり――自分の左側に移動――のステップを踏む。
************
この書き方、海外小説(翻訳小説)ではよく見かける手法です。
とうぜん、文章表現として正しい書き方です。
ですが、日本では上記のようなかたちでダッシュ記号(――)を使う作家はほとんどいません。
補足の説明や、注記をいれる場合は、
( ) 丸括弧
を使うのが一般的だからです。
************
カツオは両腕のガードを高くあげて構え、左まわり(自分の左側に移動)のステップを踏む。
※『スピードでパワーファイターに勝つ』(第一章 サークリング・テクニックの利点)より抜粋。
************
丸括弧が主流ですので、「補足説明をダッシュ記号ではさむ」という書き方は、日本の小説ではほとんど目にしません。
けっしてまちがいではないのですが、日本の読者は見慣れていないので、やはり丸括弧で表現したほうが無難(ぶなん)だと思います。
ダッシュ記号の使い方の模範は、海外小説
「小説で実際に使われているダッシュ記号の例を、もっと知りたい」
という人には、海外小説(翻訳小説)を参考にすることをお勧(すす)めします。
日本の小説よりもダッシュ記号(――)が多く使われていますからね。
プロの作家がどうやって使っているのかを学ぶのに最適だと思います。
もし、
「海外小説って言われても、どの作品を読めばいいのかわからない……」
という場合は、↓この作品をお勧めいたします。
フィリップ・K・ディック:著 浅倉久志:訳 ハヤカワ文庫SF(1977年)
※リンクは Amazon.co.jp の商品ページです。
ディックの小説を、浅倉久志(あさくら ひさし)先生が翻訳――
以前はあたりまえのこととして読んでたけど、いま思うと贅沢(ぜいたく)な本だよなぁ(笑※フィリップ・K・ディックは「鬼才」と呼ばれたアメリカのSF作家。浅倉久志先生は日本を代表する海外SFの翻訳家です。
ダッシュ記号(――)の代表的な使い方は、この1冊でほとんど学べると思います。
僕自身、作家修業中にこの本を摸写(もしゃ)したときにダッシュ記号の使い方をおぼえました。
勉強になるだけではなく、作品自体、とてもおもしろい小説です。
やっぱり、僕としてはこの小説がいちばんのオススメですね。
ダッシュ記号の使い方は工夫しだい
日本では、正式なダッシュ記号(――)の使い方や、業界の慣習といったものはありません。
正式な決まりがないので、「独自の使い方」が可能な記号でもあります。
おそらく、工夫しだいでもっといろいろな表現ができると思います。
作中でダッシュ記号(――)を使うときの参考になさってみてください。
※執筆記号に関するほかのお話
→疑問符(?)や感嘆符(!)を使うときは、業界の慣習がある
→三点リーダーの書き方や使い方には、業界の慣習がある
※摸写に関するお話
→模写(もしゃ)は、優れた文章練習法
※潜在意識の性質を活用した文章法
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