「文章力を高めるには、『本をたくさん読むことが絶対的に必要だ』という話を聞いたことがある。
……でも、私にはたくさんの本を読んでいる時間なんてない」
そういう人には、模写(もしゃ)がオススメです。
乱読(らんどく)するよりも、ずっと早く、確実に文章が上達します。
※乱読とは、いろいろな本を手当たりしだいに読みまくること。
実際に、僕は乱読をしたことがありますが……
はっきり言って、模写のほうがずっと効果的に、文章力がアップしました。
本を読むことが文章の上達になるのか?
文章の上達には、本(文章)を読むことが必須である――
その主張は、基本的に正しいと思います。
音楽家にとって「演奏する能力」と「聴く能力」は1セットです。
車の両輪のように互いに補い合うことで、双方の能力が発揮されます。
ですので、音楽家は「演奏する能力」と「聴く能力」の両方を、同時に養っています。
もちろん、作家だっておなじです。
「書く能力」と「読む能力」は、1セットです。
両方を養うことによって、文章力がアップしていきます。
ですので、文章力を高めるには、書く練習だけでなく、「読む能力」も養う必要があるのですが――
「私は仕事の合間(あいま)に執筆をしているので、たくさんの本を読んでいる時間なんてない」
「私には、本をたくさん買う経済的な余裕なんてない」
そういう人もいるかと思います。
その場合は、「たくさんの」本を読む必要はありません。
「この本は、おもしろい!」
「この小説は、すごく読みやすい」
「この作家の文章は、心に響くものがある」
「私は、この本(この小説)が大好きだ」
そういった本や作品を選び抜きましょう。
そして、あなたの感性で選んだその本を模写しましょう。
乱読をするよりも、模写のほうがずっと早く、ずっと効果的に、文章が上達するからです。
ページ内目次
・模写という文章練習法は理屈抜き やればかならずプラスになる
おもしろいと思った本――
「この作家の文章はうまい!」と感じた本――
好きな作家の本――
自分の感性に従って、そういった本を選び抜きます。
少なくてもかまいません。
1冊しかなければ、その1冊で充分です。
ですが、かならず自分の感性に従って「この人の文章は、ぜひ影響を受けたい」という本を厳選します。
ここで選んだ本が、あなたの文体(文章の個性)に大きく影響をおよぼすことになるからです。
※どうしても見つからない場合は、「自分が書くジャンルで第一人者とされている作家の本」を選びましょう。
そして、自分が選んだその本を、最初から、一字一句あまさず書きうつしていきます。
書きうつすときは、手書きでもワープロでもかまいません。
「文章は手書きで練習したほうがいい」という人もいますが、明確な根拠はありません。
手書きでもワープロでも文章にはちがいありませんので、書けばかならず練習になります。
ワープロで模写をした場合は、タイピングの練習にもなりますしね。
模写に使う時間は、長いに越したことはありませんが、時間がとれない場合は短くてもかまいません。
一日に10分~15分ていどでも、充分に効果があります。
その代わり、模写をはじめたら継続しておこなうようにします。
「毎日かならず」というほど厳格である必要はありません。
ですが、週に何日かは、一日に10分~15分でもかまわないので、かならず模写をするように心がけます。
模写は、熟読よりもずっと深く文章を読みとることができます。
書きうつすという行為は、「書く」と「読む」の両方です。
いわば、
「書きながら読んでいる」
という状態なんですね。
「書く」というのは、能動的(自発的)な行為です。
みずからの行動(体験)によって学習しています。
ですので、模写をすると、「これ以上はない」というくらいに、文章を深く読むことができます。
たとえば――
僕は学生の頃に、田中芳樹(たなか・よしき)先生の『銀河英雄伝説』を読んで、
「小説って、おもしろい!」
と心の底から思い、それがきっかけとなって小説を書くようになったのですが……。
SF軍記小説なので「自由惑星同盟軍第一三艦隊司令官」といったように、役職名や固有名詞などに漢字が多いです。
文体は歴史小説の手法を使っているため重々しく、古文のような古めかしい言いまわしがたくさん用いられています。
にもかかわらず、読みにくさを感じません。
むしろ、心地よいほどスムーズに読み進めていくことができます。
僕はこの小説をくり返し読んでいたのですが、
「むずかしい小説のはずなのに、なんでこんなにも軽快に読めちゃうんだろう?」
と、ふしぎに思っていました。
その理由は、模写をしてみてはじめてわかりました。
役職名や固有名詞で漢字をたくさん使っているぶん、動詞や、形容詞や、固有名詞以外の名詞などでひらがな表記を多くして、読みやすい文章になるようにさりげなく配慮されていたんですね。
中 → なか
大人 → おとな
本当 → ほんとう
一人 → ひとり
済む → すむ
再び → ふたたび etc.
中学生の作文でも漢字で書くような言葉を、あえてひらがなで表記することで「漢字とひらがなの割合」を調和させ、文章を読みやすくしていたんですね。
僕はこのときの模写のおかげで、
「プロの作家は見栄(みえ)や気取りを捨てて、読者への配慮を優先させて書いている」
ということを、体験と実感によって知ることができました。
僕は、この本をくり返し読んでいたにもかかわらず、模写をするまで気づくことができませんでした。
模写は、熟読よりもさらに深く、文章を読むことができます。
模写をすると、たくさんのことに気づきます。
つまり、「ふつうに読むよりもたくさんのことを学べる」ということです。
しかも、「書く」という行動(体験)による学習なので、身につくのが早いです。
「模写をすると、自分の文章が、模写をした作家の文章に自然と似てくる」
ということです。
「うまい人の文章」を模写していたら、自分が書く文章も、いつの間にかうまくなっていた――
ということになるんですね。
僕の経験から言って、乱読をしても文章力が高まるとはかぎりません。
広く浅くたくさん読んでも、しょせんは「浅い」からです。
時間がかかる割に、そこから学べることは多くありません。
それよりも、自分の感性に従って、
「好きな文章(ぜひ影響を受けて、取りいれたい文章)」
を選び抜いて、それを模写したほうが、ずっと効果的です。
自分にとってプラスになる文章を、
集中的に、
体験によって、
深く学びとることができるからです。
とまあ、模写についていろいろと語りましたが……
ぶっちゃけ、模写という練習法については、理屈抜きです。
「いいから、やってみなよ。絶対に効果があるから」
というたぐいのものです。
小説(文章)がうまくなるためだったら、努力はいとわない――
練習の方法さえ教えてくれたら、かならず継続して練習する――
そんな真摯(しんし)な気持ちで小説修行に励んでいる人は、「模写」という優れた練習法をぜひ試してみてください。
かならずプラスになりますから。
※小説の練習法に関するほかのお話。
→日記で、小説を書く練習をする方法
→プロット(物語)の作成能力を養う練習法
→『自分の言葉』で書く能力を養う文章練習法
更新
2023年11月19日 一部、全角数字を半角数字に変更。
模写で文章練習する方法 (本条克明の場合)
おもしろいと思った本――
「この作家の文章はうまい!」と感じた本――
好きな作家の本――
自分の感性に従って、そういった本を選び抜きます。
少なくてもかまいません。
1冊しかなければ、その1冊で充分です。
ですが、かならず自分の感性に従って「この人の文章は、ぜひ影響を受けたい」という本を厳選します。
ここで選んだ本が、あなたの文体(文章の個性)に大きく影響をおよぼすことになるからです。
※どうしても見つからない場合は、「自分が書くジャンルで第一人者とされている作家の本」を選びましょう。
そして、自分が選んだその本を、最初から、一字一句あまさず書きうつしていきます。
書きうつすときは、手書きでもワープロでもかまいません。
「文章は手書きで練習したほうがいい」という人もいますが、明確な根拠はありません。
手書きでもワープロでも文章にはちがいありませんので、書けばかならず練習になります。
ワープロで模写をした場合は、タイピングの練習にもなりますしね。
模写に使う時間は、長いに越したことはありませんが、時間がとれない場合は短くてもかまいません。
一日に10分~15分ていどでも、充分に効果があります。
その代わり、模写をはじめたら継続しておこなうようにします。
「毎日かならず」というほど厳格である必要はありません。
ですが、週に何日かは、一日に10分~15分でもかまわないので、かならず模写をするように心がけます。
模写をすることで多くのことが学べる
模写は、熟読よりもずっと深く文章を読みとることができます。
書きうつすという行為は、「書く」と「読む」の両方です。
いわば、
「書きながら読んでいる」
という状態なんですね。
「書く」というのは、能動的(自発的)な行為です。
みずからの行動(体験)によって学習しています。
ですので、模写をすると、「これ以上はない」というくらいに、文章を深く読むことができます。
たとえば――
僕は学生の頃に、田中芳樹(たなか・よしき)先生の『銀河英雄伝説』を読んで、
「小説って、おもしろい!」
と心の底から思い、それがきっかけとなって小説を書くようになったのですが……。
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田中芳樹:著 創元SF文庫(2007年)
※リンクは Amazon.co.jp の商品ページです。
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SF軍記小説なので「自由惑星同盟軍第一三艦隊司令官」といったように、役職名や固有名詞などに漢字が多いです。
文体は歴史小説の手法を使っているため重々しく、古文のような古めかしい言いまわしがたくさん用いられています。
にもかかわらず、読みにくさを感じません。
むしろ、心地よいほどスムーズに読み進めていくことができます。
僕はこの小説をくり返し読んでいたのですが、
「むずかしい小説のはずなのに、なんでこんなにも軽快に読めちゃうんだろう?」
と、ふしぎに思っていました。
その理由は、模写をしてみてはじめてわかりました。
役職名や固有名詞で漢字をたくさん使っているぶん、動詞や、形容詞や、固有名詞以外の名詞などでひらがな表記を多くして、読みやすい文章になるようにさりげなく配慮されていたんですね。
中 → なか
大人 → おとな
本当 → ほんとう
一人 → ひとり
済む → すむ
再び → ふたたび etc.
中学生の作文でも漢字で書くような言葉を、あえてひらがなで表記することで「漢字とひらがなの割合」を調和させ、文章を読みやすくしていたんですね。
僕はこのときの模写のおかげで、
「プロの作家は見栄(みえ)や気取りを捨てて、読者への配慮を優先させて書いている」
ということを、体験と実感によって知ることができました。
僕は、この本をくり返し読んでいたにもかかわらず、模写をするまで気づくことができませんでした。
模写は、熟読よりもさらに深く、文章を読むことができます。
模写をすると、たくさんのことに気づきます。
つまり、「ふつうに読むよりもたくさんのことを学べる」ということです。
しかも、「書く」という行動(体験)による学習なので、身につくのが早いです。
「模写をすると、自分の文章が、模写をした作家の文章に自然と似てくる」
ということです。
「うまい人の文章」を模写していたら、自分が書く文章も、いつの間にかうまくなっていた――
ということになるんですね。
僕の経験から言って、乱読をしても文章力が高まるとはかぎりません。
広く浅くたくさん読んでも、しょせんは「浅い」からです。
時間がかかる割に、そこから学べることは多くありません。
それよりも、自分の感性に従って、
「好きな文章(ぜひ影響を受けて、取りいれたい文章)」
を選び抜いて、それを模写したほうが、ずっと効果的です。
自分にとってプラスになる文章を、
集中的に、
体験によって、
深く学びとることができるからです。
「模写」という文章練習法は理屈抜き やればかならずプラスになる
とまあ、模写についていろいろと語りましたが……
ぶっちゃけ、模写という練習法については、理屈抜きです。
「いいから、やってみなよ。絶対に効果があるから」
というたぐいのものです。
小説(文章)がうまくなるためだったら、努力はいとわない――
練習の方法さえ教えてくれたら、かならず継続して練習する――
そんな真摯(しんし)な気持ちで小説修行に励んでいる人は、「模写」という優れた練習法をぜひ試してみてください。
かならずプラスになりますから。
※小説の練習法に関するほかのお話。
→日記で、小説を書く練習をする方法
→プロット(物語)の作成能力を養う練習法
→『自分の言葉』で書く能力を養う文章練習法
更新
2023年11月19日 一部、全角数字を半角数字に変更。
2024年1月4日 記事内の広告を削除。
2024年9月22日 ラベルを削除。
2024年10月2日 ラベル「創作哲学」を追加。
2024年10月5日 記事内に広告を追加。
2024年10月21日 ページ内目次を追加。