2018年1月13日土曜日

日記で、小説を書く練習をする方法


「日記を書くことが、小説を書く練習になる」
 と言う人がいます。

 たしかに、「日記を書く」という習慣には文章力を高める効果があると思います。
『話す』という行為は日常的なことであり自然なことですが、『書く』という行為は、それほど自然なことではありません。
 毎日文章を書くと、「書くこと」を自然な行為に近づけてくれます。

 とはいえ、僕の経験から言って「日記を書けば、小説の文章もうまく書けるようになる」とはかぎりません。
 日記で書く文章と、小説の文章は、かなりちがうからです。

「小説の修行法」として日記を書くのであれば、書き方をそれなりに工夫する必要があります


小説の練習になる日記の書き方(本条克明の場合)


三人称形式の客観視点で書く練習法


 日記というのは一人称の主観視点(『私』、『俺』、『僕』などの自分の視点)で書くのがふつうです。
 ですが、あえて三人称の客観視点で書きます

 つまり、自分のことも名前(もしくは代名詞)で書き、登場人物のひとりとして書くんですね。
 客観視点ですので、自分のことも他者からの視点(もしくは中立の視点)で書きます。

 たとえば、僕(本条克明)の場合だと、こんな感じ(↓)になります。

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2018年1月13日(土)
 この日、本条克明は「日記を使った小説修行法」をブログで公開した。
 本条が若い頃、実際におこなっていた練習法だ。

「作家としてこういったことは企業秘密にすべきだ」

 という思いが、本条にはある。
 だが、それと同時に、
「俺が体験的に学び得たことを、必要としている人に教えてあげたい」
 という思いを、本条は強くいだいている。

 このジレンマ――矛盾しているもどかしさ――による葛藤(かっとう)のすえに、彼はこの方法を公開することに決めた。

 自分が学び得たことを伝えたい、という思いがまさったからだ。
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 ……自分のことを三人称にしただけで、だいぶ小説っぽい文章になってますよね(笑

 もちろん、自分は主人公ですので、ときどき視点が同化してもかまいません。
 ですが、あくまでも自分のことは名前(もしくは代名詞)で表記します。

 このようにして書くと、一日の記録が「三人称形式の小説」のようになります
 つまり、『日記』が三人称小説を書く練習になるんですね。


会話形式で書く練習法


 まず、架空(かくう)のキャラクターを設定します。

 そして、その架空のキャラクターと会話をするかたちで、その日の出来事を書き記していきます

 たとえば、僕(本条克明)の場合だと、こんな感じ(↓)になります。

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2018年1月13日(土)
(本条)「今日、『日記を使った小説修行法』をブログで公開した」

(架空のキャラ)「それはまた、ずいぶん大胆なことをしましたね」

「そう思うか?」

「みずから手の内を明かす行為ですからね。一般向けに公開するのは、賢明ではないと思いますよ」

「たしかに、作家としてはそのとおりだろう。でも人情としては、俺の知識や経験が誰かの役に立つのなら、必要としている人に教えてあげたいじゃないか」

「……まあ、その気持ちはわかりますけどね」

「わかるか?」

「ええ、わかります。わたしにだって人情はありますからね。もし『毎日かかさず日記をつけているのに小説の文章が上達しない』ということで悩んでいる人がいたら、あなたのアドバイスがきっと励みになるでしょうからね」
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 ……会話で話を進めていくだけで、だいぶ物語っぽくなりましたよね(笑

 地の文(会話以外の説明の文)は、いれてもいれなくてもかまいません。
 僕の場合、この練習法をやるときは、地の文をいれずに会話文だけで書いています。

 このようにして日記をつけると、会話による表現力がアップして、小説の文章がより魅力的になってきます
 登場人物の「台詞(せりふ)」や「会話」による表現が、小説をよりおもしろく、魅力的にするからです。


ばかばかしい日記の書き方だけど……だからこそ練習しよう


 僕はこのふたつの書き方で、日記で小説の練習(文章修行)をしました。

「そんな変な書き方で日記を書くなんて、なんだかふざけてるみたいで、ばかばかしく思えるよなぁ……」

 なかにはそのように思った人もいるかもしれませんが――

 でも、そういうこと言っちゃダメです(笑

 物語の創作者というのは、ばかばかしいと思えるようなことに夢中になれる人たちです。
 小説をうまく書けるようになりたいのであれば、こういう練習こそ真剣にやるべきですよね。


 今回ご紹介した方法は、あくまでも「本条克明の場合はこれで効果があった」というやり方です。

 日記で小説を書く練習がしたい――と思っている人は、ご紹介した方法を参考に、さらにアレンジ(再構成)して、自分に合ったやり方を模索してみてください。

 自分に合っていること――
 それが、あなたにとってもっとも優れた練習法なのですから。


小説の練習法に関するほかのお話。
模写(もしゃ)は、優れた文章練習法
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