2018年1月16日火曜日

栗色(くりいろ)は、皮の色? 中身の色?


 小説は「活字のメディア」ですので、言葉(文章)ですべてを表現します。
 それゆえに、「伝えようとしているイメージがうまく伝わらない」という問題が生じたりします。

 でね――

 ちょっとお尋ねしたいのですが、

 栗色(くりいろ)と聞いて、どんな色を思い浮かべますか?

 栗の皮の色ですか?
 それとも、栗の中身の色ですか?


栗色ってどんな色?


 僕は以前、このことでショックを受けたことがあります。

「人によって『栗色』と聞いて思い浮かべる色がちがう」
 ということに気づいたからです。

 僕はずっと作中の登場人物に「栗色の髪」という設定をふつうにおこなってきたので、それはもう愕然(がくぜん)となりましたよ。


栗色って、皮の色? 中身の色?


「栗色」から思い浮かべる色は、ふたつに分かれます。

 一方は、栗の皮の色――赤みがかった濃い茶色
 もう一方は、栗の中身の色――明るい黄色

 僕は登場人物の髪の色に「栗色」という設定をよく使っていたのですが、皮の色と中身の色では、まったくと言っていいほどイメージが異なってしまいます。

 皮の色だと濃い茶色になるので、少し地味で、控え目な印象になります。

 中身の色だと明るい黄色になるので、派手で、きらびやかな印象になります。
 ほとんど金髪に近い色ですよね。


 これ、いろんな人に訊いてみたのですが、ものの見事に半々にわかれました。
あくまでも本条克明の調査結果です。

 つまり、小説で『栗色』の表現を使うと、ちゃんと伝わらない可能性が50%になるということです。
 うぅぅぅん……。


栗色の、本当の色


「栗色」というのは、皮の色です。

 赤みがかった濃い茶色。
 カラーコードだと #762F07。

 ↑これが、栗色です。

 見てのとおり、中身の色(黄色)とはぜんぜんちがう色です。
 これって悩ましい問題だよなぁ、50%の確率で勘違いされるというのは……。

 海外小説や、SF・ファンタジー小説をたくさん読む方であれば、いろんな髪色の表記に慣れているので、色には敏感だと思います。

 ですが、それ以外の方の場合は――
 考えてみると日本人の場合は、「黒髪茶髪金髪」ぐらいの分類しかしないのがふつうですよね。
 銀髪は、黒髪が一般的な東洋人がやると白髪(はくはつ)っぽく見えるので、やる人はあまりいないし。


 小説は活字メディアですので、「言葉から読者が自由にイメージする」という特徴を持っています。
 ですので、書き手のイメージを100%伝える必要はないのですが……。
 とはいえ対極に近いほどのギャップ(へだたり)があるとなると、さすがに考え物ですよね(苦笑


デジタル時代の文章なら、意外と簡単に克服できる?


 この「栗色」のケースは、言葉で表現することのむずかしさを実感させられます。

 と、言いつつ――

 僕の場合は「カラー小説」という名目で、「フォント(文字)に色をつける」という手法を使うようになったので、それほど頭を悩ませる必要はなくなりました。
 だって、どうしても色を正しく伝えたいのであれば、

  栗色

 といった感じで、実際にフォントを栗色にしちゃえばいいんですから(笑

 WEBや電子書籍として公開するときには、文章に色分けをしていますので、僕の場合は「色を伝えるむずかしさ」という問題は、とりあえずクリアしました。
 とはいえ、色分けに依存して「言葉で伝える」という努力を怠ったりしないように、自分を律しながら文章を書いています。
 言葉で表現するのが作家の仕事なんですから、色分けにあまえすぎちゃダメですよね(笑

『色』には、その色自体にイメージがあり、その色特有の印象を相手に伝えます
 書き手としては、やっぱり『色』は正確に伝えたいですよね。


「言葉では伝わりにくい色」に関するほかのお話はこちら
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