2018年1月29日月曜日

自分らしく個性的になるには? 創作とオリジナリティ


 僕は、作家を志したときに、
「個性(オリジナリティ)」
 について考え、自問自答をくり返しました。

 作家にかぎらずクリエイティブな活動をしている人であれば、「個性」について考察し、自分なりの『答え』を導きだしていると思います。

 今回は、
「個性とは何か?」
 という問題と真摯(しんし)に向きあっている人のために、一作家としてアドバイスいたします。


「個性」とは?


 小説では「オリジナリティ(個性)」が重んじられています。

 では、「個性」とはなんでしょう?


他人とちがっていること――それを基準にしていたら「本当の個性」は現れない


「個性」とは、「その人特有の性質」のことです。
 つまり、ほかとはちがっていることを指します。

「それじゃ小説で個性をだすには、ほかの小説とちがう書き方をすればいい」
 ということになりそうですが、それはちょっとちがう気がします。

 たしかにそれも個性ではあるのですが、
「ほかとちがうように書く」
 ということを意識している時点で、ほかの人の小説が基準になっています。
 他人が基準になっているうちは「本当の個性」とは言えません。

 つまり、本当の個性は「自分らしさ」のなかにあると、僕は考えています。

 では、「自分らしさ」とはどういうことでしょう?


生まれながらにある『心』に、自分らしさがある


 話は変わりますが――

 日本語では『心』をあらわす言葉は『心』だけです。
 ですが、英語ではふたつの言葉――「マインド(mind)」「ハート(heart)」で表現されています。

「マインド」は、理性や思考といった意味における心で、おおむね脳のことを指しています。

「ハート」は、感情や感覚をつかさどる部分の心です。
 名称の通り、この心は胸(心臓)にあると考えられているみたいですね。

 人は、生まれた直後はまだマインドが未発達です。
 そのため、ハートが唯一の心です。
 そういう意味では、生まれながらにして存在するハートが『本当の心』と言えるのかもしれません。


 マインドにとっては、
「良いか悪いか」
「正しいかまちがっているか」
 ということが物事の判断基準になります。

 ハートは、それとはちがう判断の仕方をします。
 理性的な善悪の判別ではなく、『感情』が判断の基準です。
 つまり、「好き(快)」「嫌い(不快)」で物事を判断します。

 生まれながらにしてあるハートのほうが『本当の心』だとすれば――
 この「好きか嫌いか」こそが、本心(本当の自分)による判断だと言えます。


 そして、導きだされる結論は――

「自分らしさ」は「好き-嫌い」を判断基準にすることで現れる。
 そしてそこから「個性」が生まれる。

 実際、「人の好み」というのは、人によってさまざまです。
 善悪の価値観は、社会共通であることによって規律が守られるため、個人差はあまり見られません。
 ですが、「人の好み」は個々の感情によるものなので、個人差があります。

 なので僕は、僕の「好き」を判断基準にして創作をしています。

 僕の好きなことを題材に、
 僕の好きなストーリーをつくって、
 僕の好きな書き方で書く――

 といった具合に。

 そうやってつくりあげた小説は、たとえアイデアに斬新さがなかったとしても、「僕らしい小説」に仕上がります。
 これが本当の意味でのオリジナリティ(個性)なんだと、僕は考えています。


本当の自分、本当の個性が、あなたを通してあらわれてくる


 ハートの声を重視して「好きか嫌いか」を判断基準にする――
 これは、口で言うほど簡単ではありません。

 なぜなら、私たちはみな、
「好き嫌いでものごとを判断するな、良いか悪いかで判断しろ!」
「感情で判断するな、理性的になれ!」
 そう訓練されて育つからです。

 このような価値観を植えつけられるのは、集団のなかで規律を守って生活できるようにするためです。
 このことは、社会性を身につけるためには必要なことです。

 ですが、ほとんどの人が「善し悪しの判断」が深く潜在化しているために、マインド(思考する心)が優勢になりすぎています。
 つまり、『本心』であるはずのハート(感情や感性)が抑圧されて、退化してしまっているんですね。

「やりたいことがわからない」
「自分の好きなことがわからない」
 そういった若者の悩みはみな、ハートが機能しなくなっていることが根本的な原因です。

 なので、もし「個性」や「自分らしさ」がわからなくて悩んでいるのであれば……

 ときどきでもかまいません。
 少しずつでもかまいません。
 創作に関することをやっているあいだだけでもかまわないので、「良い悪い」を基準に判断するのはやめて、自分のハート(感情)に『答え』を求めてみましょう

「何が良いのか?」
 ではなく、
「(私は)何が好きなのか?」
「(私は)どっちが好きなのか?」
 それを、自分の『心』に問いかけてみましょう。

 ハートが教えてくれた「好き(快)」こそが、あなたの本心です。
 その『想い』に従いましょう。

 そうすることで、
「本当の自分」
「本物の個性」
 が、あなたを通して現れてきます。


「個性」に関するほかのお話は、こちらをご参照ください。
自分の頭で考える それが個性のはじまり