今回から6回に渡って、僕の「小説の創作法」をご紹介いたします。
ここでご紹介する方法は、あくまでも「本条克明の場合は」というやり方です。すべての人に通用する創作法ではありません。
小説には、すべての人に共通する書き方(創作のしかた)というものは存在しないからです。
※こちらをご参考ください。
→「小説の書き方」はない……けど、ある
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今回は、第1回目として、
「モチーフを得る方法」
について、お話しいたします。
創作は、モチーフを得るところからスタートする
モチーフという言葉は、「動機」や「きっかけ」という意味のフランス語です。
小説におけるモチーフは、「題材」のことです。
つまり、
「物語の大本(おおもと)となるアイデアやテーマ」
を意味しているんですね。
僕の創作活動は、「モチーフを得る」という工程からスタートします。
モチーフ(題材、最初のアイデア)がないことには、何もはじまりません。
まさに、「創作活動の土台」ですよね。
ページ内目次
小説のモチーフを得る方法(本条克明の場合)
すでに「こういうのが書きたい!」というイメージやテーマがある場合は、それがそのままモチーフになりますので、この段階は終了です。
ですが、書きたい作品のイメージやプランがない場合は、モチーフとなるアイデアやテーマをさがさなくてはなりません。
頭を使って、ありとあらゆる可能性をひたすら考えることになります。
と、言いながら――
実は、かなりリラックスしてやってます(笑
ある意味、遊び感覚です。
リラックスしてやったほうが柔軟なアイデアがでやすいので、軽い気持ちでやるようにしています。
一日のなかで時間がとれたら、机に向かって、
「モチーフを得るための考察」
をおこないます。
××時から○○時まではモチーフとなるアイデアをさがす時間と決めて、机に向かいます。
と言っても、あまり緊張感はありません。
のんびり、楽しんでやってます(笑
ノートやレポート用紙、紙の裏側などを使って、思いついたことを脈絡もなく書き連ねていきます。
ほとんどが、日々疑問に思っていることの考察です。
「幸せってなんだろう?」
「愛ってなんだろう?」
「神ってなんだろう?」
たいがい、そんなことを考えています。
はっきり言って、小説とは直接関係のないことばかりです(笑
ですが、僕の場合は、こういったなにげない思考のなかから「伝えたいメッセージ」や「かたちにしたいテーマ」が見つかり、それがそのままモチーフになることがよくあります。
ちなみに――
以前に『可変人間サーガ』という「獣に変形する人間」をモチーフ(題材)にした小説を公開していたことがあるのですが――
※現在は公開していません。
この作品のときは、こんな感じでモチーフを得ました。
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2007年のある日のこと――
机に向かいながら、
「そういえば『トランスフォーマー』がハリウッド映画になるんだよなぁ……」
と、そんなことをぼんやり考えていました。
「……子供の頃は変形するロボットが好きだったよなぁ。
変形はいいよなぁ、男のロマンだよなぁ。
いっそのこと、人間も変形しちゃえばいいのに……。
……あ、やばい、思いついちゃったかも!」
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とまあ、こんな感じでした(笑
思いついた瞬間は、「くだらない思いつき」だと感じていました。
でも、思いついたことに対してはとりあえず可能性を考えてみるようにしているので、
「人間が変形するとしたら、どんなものが考えられるだろう?」
と、自問してみました。
「人間がメカに変形しても、単なるサイボーグやアンドロイドにしかならない……斬新さをだすには、『生身の人間』が『生身の獣』に変形するほうがいいんじゃないかな」
そう考えて、ノートに変形のアイディアをいろいろと書きだしてみました。
気がつけば、夢中になって3時間以上もアイディアを書きなぐっていました。
とても楽しかったので、
「このアイディアは、絶対にかたちにしたい!」
という強い意欲がわきあがってきました。
そしてこれが、『可変人間サーガ』のモチーフになりました。
こんなふうにして、遊び感覚の軽い気持ちからモチーフが生まれることが、たびたびあります。
モチーフをたくさん集めることで、ひとつのプロット(物語)になることがある
モチーフは「動機」や「きっかけ」のことですので、通常は、ひとつの物語に対してモチーフはひとつだと思います。
ですが、『きみの微笑みが嬉しくて』のときは、たくさんのモチーフが集まって創作がスタートしました。
※『きみの微笑みが嬉しくて』は、本条克明が以前に電子書籍として配信していた恋愛小説です。現在はWEB小説として『恋とは幸せなものなんだ』というサイトで公開しています。
→目次 『きみの微笑みが嬉しくて』 (恋とは幸せなものなんだ)
「読んだあとに、少し優しい気持ちになれる――そんな小説にしたい」
「悲しみや切なさを煽(あお)るような小説ではなく、『人を好きになる喜び』が伝わる恋愛小説にしたい」「アレクサンドル・カレリン氏は、金メダルをとった喜びは20分しかつづかないと言っているけど、それはどういう意味なんだろう?」
いくつかの案をまとめてみたら、物語のプランができあがっていた――ということは、ときどき起こります。
『きみの微笑みが嬉しくて』のときは、そんな感じでした。
作品に「こういうテーマやメッセージを盛りこみたい」というモチーフを集めてみたら、物語の大部分ができあがっていたんですね。
良いモチーフを得ることによって、創作の意欲を最後まで持続させることが容易になる
モチーフをさがす作業は0から1を生みだす行為ですので、慎重に、根気よくやるようにしています。
「モチーフ(motif)」という言葉はフランス語ですが、英語では「モチベーション(motivation)」がモチーフの同義語に当たります。
知ってのとおり、モチベーションは「やる気」や「意欲」という意味の言葉です。
モチーフの段階で「これだ!」とか「絶対にかたちにしたい!」と思えるようなアイデアやテーマを見つけだすと、創作のモチベーションを最後まで持続させることが容易になります。
ですので僕は、モチーフ選びは妥協せず根気よくやるように心がけています。
僕にとってモチーフさがしは、自分でも気づいていなかった「自分にとって強い関心のあるもの」や「自分の好きなもの」を見つけだす行為だったりします。
そんなふうにして自分と向き合えるところもまた、小説を創作する楽しさのひとつですよね。
※本条克明の小説作法
→小説のモチーフを得る(1) 当記事
→小説の舞台・世界観を設定する(2)
→小説のキャラクター(登場人物)を設定する(3)
→小説のプロットを仕上げる(4)
→小説の執筆をする(5)
→小説の推敲・校正をする(6)
※「思いつきを大事にする」についてはこちらをご参考ください。
→アイデアとは、くだらない思いつき? 構えすぎないことが良いアイデアをだす秘訣
更新
2020年1月1日 文章表現を一部改訂。
2024年7月27日 ページ内目次を追加。