2018年2月6日火曜日

小説の世界観・舞台を設定する (本条克明の小説作法2)


 今回は、僕の「小説の創作法」の2回目として、
「世界観・舞台を設定する」
 について、お話しいたします。

1回目から読む場合は、こちらの記事をご閲覧ください。
小説のモチーフを得る (本条克明の小説作法1)


設定はプロットの要(かなめ)


 小説において「設定」は、プロットに欠かせないものです。

プロットの意味については、こちらをご参照ください。
小説における「プロット」とは?

 僕の場合、プロットの作成は、舞台(世界)の設定からはじめています。
 プロットづくりの最初の段階で、

  • 物語の世界観(作風)
  • 舞台となる場所や、シチュエーション(状況)

 そういったことを決めていくんですね。


世界観・舞台設定のやり方(本条克明の場合)


 僕の場合、基本の設定項目はこんな感じです。

************
<世界観(作風)設定>
●タイトル(仮題)
●テーマ
●作品の雰囲気
●文体
●視点
●簡単に言うと……

<舞台設定>
●時代
●季節
●よく出てくる場所
●シチュエーション(世の中の状況)
●決まり事(規則、制服など)
************

 設定のいちばんはじめに、タイトル(作品名)をつけるようにしています。
 といっても仮題ですので、最終的にはちがうタイトルになることも多々あります。
 ですが、仮題であっても作品に名前があると、作品に対する思い入れが強くなりますので、最初に「タイトル」の項目を埋めるようにしています。


●作品の雰囲気
●文体
●視点

 これらの項目は、作品の世界観をどういうふうに表現するかを決めるためのものです。
 要するに、「作風(さくふう)」のことですね。


●視点
 という項目は、作品を「誰の視点で描写するのか」についてです。
 一人称形式であれば、その登場人物(主人公)の1視点になります。

 三人称の場合は、
「シーンごとに、視点を変えて(視点となる人物を変えて)描写する」
「中立の視点(もしくは神の視点)で描写する」
「中立の視点(もしくは神の視点)と、登場人物の視点を、状況によって切り替えながら描写する」
 などのパターンがあります。


●簡単に言うと……
 という設定項目は、モチーフ(おおもとのアイデア)や、テーマ(主題)がぶれないようにするために設けています。

 プロットをつくっていくうちに、もとのアイデアとはちがったものになってしまうことがよくあるんですね。
 ですので、一貫性を保つために、物語の特性を簡潔に言いあらわすようにしています。


『罪や過ちは消せないのか?』のときは、
●簡単に言うと……「罪悪感を乗り越える方法」を物語で表現した短編小説



『「構え」とはなんだ?』のときは、
●簡単に言うと……「構え」の意味をシンプルにとらえ、より実践的(実用的)なものにする――というメッセージを物語化した短編小説



『スピードでパワーファイターに勝つ』のときは、
●簡単に言うと……「スピードで、自分よりパワーでまさっている相手を攻略する方法」を模索する姿を描くことで、困難を克服する姿勢を示した物語

 というふうに書いてありますね。
完成したあとに設定を読み返すと、なんだか不思議な感じがします(笑

『罪や過ちは消せないのか?』、『「構え」とはなんだ?』、『スピードでパワーファイターに勝つ』は、本条克明が以前に電子書籍として配信していた連作ボクシング小説です。(現在はWEB小説として『月尾ボクシングジム物語』というサイトで公開しています)
月尾ボクシングジム物語


 そして、この「簡単に言うと……」の項目のフレーズをメモ用紙に書いて机に貼ります。
 創作のあいだずっと念頭に置くことで、
「テーマがぶれない」
「作品に想いが込められる」
 という効果があるからです。


SFやファンタジーの場合は設定項目が多くなる――設定がしっかりしていることで架空の世界にリアリティが生まれる


 作品によって、項目を省いたり、項目を増やしたりすることもあります。

 特に、異世界ファンタジーやスペースオペラ(宇宙を題材にしたSF)など、舞台となる世界そのものが架空の場合は、設定する項目がおおはばに増えます。

 以前に、ネット上で『可変人間サーガ』という異世界ファンタジー小説を公開していたことがあるのですが――
現在は公開していません。


『可変人間サーガ』のときは、ほかにこんな設定項目を設けていました。

************
●大陸の地図
●大陸の歴史
●王国の制度と歴史
●軍隊
●宗教
●教会の制度と歴史
●修道院
●魔術(魔法)
●変形能力者(可変人間)
●モンスター(魔物)
************


 ファンタジーやSFの場合は、非現実的な世界を描くことになります
 そのため、設定が緻密(ちみつ)であるほど説得力が増して、物語にリアリティが生まれます

 作中で語られないまま終わってしまう設定もたくさんでてきます。
 ですが、それは決してムダではありません。
 語られることのない設定のひとつひとつが、作品の世界観を支えてくれるからです。


心のなかのイメージがかたちになっていく楽しさ


 世界観や舞台を設定していくのは、とても楽しいです。
 頭のなかの漠然(ばくぜん)としたイメージの世界が、ひとつ、またひとつとかたちになっていきますので、自分でもワクワクしてきます。

 自分の心のなかから生まれた世界ですからね。
 楽しいに決まってますよね(笑


本条克明の小説作法
小説のモチーフを得る(1)
小説の世界観・舞台を設定する(2) 当記事
小説のキャラクター(登場人物)を設定する(3)
小説のプロットを仕上げる(4)
小説の執筆をする(5)
小説の推敲・校正をする(6)