前回の記事のなかで、
「プロとは何か?」
というテーマを例にあげていますが……
※こちらをご参照ください。
→本質を突き詰めていく思考法 (自分の頭で考える哲学的思考法7)
前回の記事では、<さらに本質を突き詰めていく思考のやり方> の考察例の結論――なんでプロは妥協しちゃいけねぇんだ?――が記されずに終わっています。
というわけで今回は、そのお話(ボクシングにおけるプロとは?)をしたいと思います。
なぜプロには妥協がゆるされないのか?
当時、プロボクサーを目指していた僕は「プロとは何か?」と問いつづけたすえに、
「プロとは、すべてにおいて妥協(だきょう)しないことだ」
という結論にたどり着きました。
ですが、僕を指導していたトレーナーは、この『答え』では満足しませんでした。
プロとアマチュアのちがいとは?
僕がプロテストに合格し、正式に『プロ』の一員として認められるようになったその翌日――
トレーナーが練習を終えた僕のもとへやってきて、僕にこう問いかけてきました。
「プロとアマチュアのちがいはなんだ?」
僕は、自分の考えのとおりに、
「プロは、すべてにおいて妥協しないことだと思います」
と答えました。
すると、トレーナーはかすかに笑みを浮かべてこう言います。
「なるほどな、まちがいじゃねぇよ。でも、なんでプロは妥協しちゃいけねぇんだ?」
「…………」
「おまえはもうプロだから教えてやる。
プロってのは『結果がすべての世界』なんだ。だから妥協することはゆるされねぇ。
プロは結果がすべてだ! おぼえておけ!」
プロボクサーの仕事は「闘うこと」ではなく「勝つこと」
トレーナーは、つづけて言います。
「どんなに一生懸命がんばって素晴らしいファイトをしても、まけたら『1敗』という恥ずかしい記録しか残らねぇ。
正攻法できれいなファイトをしても、卑怯な手を使ってくるやつにまけたら『1敗』がつくだけで、誰もおまえを褒(ほ)めたりはしない。
おまえを応援してくれる人たちは、おまえが勝つのを期待して、おまえと一緒に勝つ喜びを味わいたくて、金を払ってまで会場に応援に来るんだ。
まけたら、その人たち全員を裏切ることになる。
試合の内容が素晴らしいに越したことはねぇが、それは勝つことが前提にあってのことだ。
かっこ悪くてもいい。どろくさい闘い方でもいい。まぐれでもいい。
勝て!
何がなんでも、勝て!」
ボクシング(スポーツ)の世界におけるプロ意識
このようにして僕は恩師から、
「プロとは何か?」
ということを教わりました。
いま振り返ってみても、この人がトレーナーで本当に良かったと思っています。
世間一般的な「プロとはそれでお金をもらっていること」という考え方を教え込まれていたら、僕はちがう人間になっていたと思います。
報酬の額が少ないと不満を言ってちゃんと仕事をしない人間になっていたでしょう――
ギャラの少ない仕事や職業を、差別したり蔑視したりする人間になっていたでしょう――
すべてにおいて利益や損得を最優先にし、人として最低の人間になっていたかもしれません。
人の価値観は人それぞれですので、ほかの人の考え方を否定するわけではありませんが、
「プロ = お金」
という考え方が、さまざまな業界で「プロ意識」をそこなわせているのは否めないと思います。
「結果をだすためには妥協しない」
それが、本当のプロ意識だと僕は思います。
誰であれ、「プロ意識」が必要なときがやってくる
「プロ」という言葉には特殊な人たちのような響きがあるので、自分とは無縁のように感じるかもしれません。
ですが、人生には何度かこの「プロ意識」をもって挑まなければならない場面がやってきます。
結果がでなかったら、これまでの努力がすべてムダになってしまう――
結果がだせなかったら、支えてくれた人たちに恩返しができない――
もし結果がでなかったら、「自分は目標を達成できる人間だ」ということを、自分自身に証明できない――
結果がだせなかったら、支えてくれた人たちに恩返しができない――
もし結果がでなかったら、「自分は目標を達成できる人間だ」ということを、自分自身に証明できない――
そんなときには、結果にこだわりましょう。
プロセス(過程)が完璧である必要はありません。
ミスがあっても、
失敗の連続だったとしても、
遠回りをしたとしても、
苦しいことばかりだったとしても、
失敗の連続だったとしても、
遠回りをしたとしても、
苦しいことばかりだったとしても、
最終的に結果を残せたのなら、それでいいんです。
「何があろうとも、結果だけはかならず残す!」
「そのためなら、いっさい妥協はしない!」
「ここぞ!」というときには、そんな強い決意(プロ意識)で挑みましょう。
結果にこだわるからこそ、不正をしない自制心が必要になる
と言っても、当たり前のことですが、不正をしてもいいという意味ではありません。
先ほどのトレーナーの話、もう少しつづきがあります。
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「プロの世界はな、汚いこともみんなやってくる。反則まがいのこともやるし、ときには故意に反則をするやつまでいる。みんなそこまでして勝ちてぇんだ」「…………」
「反則してでも勝ちたい、その気持ちは大事だ。おまえもそれぐらいの気持ちで行け」
「はい!」
「ただし――」
と、トレーナーは不敵な笑みを浮かべて言います。
「もし本当に反則なんかしやがったら、ただじゃ済まさねぇからな!」
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どんなことをしてでも結果をだす――
その気持ちを大切にしましょう。
ですが、本当にどんなことでもしていいわけではありません。
不正な手段にはとびつかない――その「自制心」は決して忘れないようにしましょう。
この妥協のない精神があるのなら、あなたもプロの一員
努力をしてもなかなか結果がでないときに、
「頑張ったんだから、いいや……」
「これが私の能力の限界なんだ……」
などと正当化したり、あきらめたりしてはいけません。
そこにはアマチュアゆえの甘えがあります。
努力をしても結果がでない場合は、
「まだ努力が足りない」か、
「努力の仕方がまちがっている」か、
そのどちらかです。
努力とは結果をだすためのもの――それがプロの考え方です。
「何があろうとも、結果だけはかならず残す!」
「そのためなら、いっさい妥協はしない!」
このことをみずからに課して、真摯(しんし)に守れるのであれば――
あなたも立派な『プロ』の一員だと思います。
※こちらもご参考ください
→作家(創作家)におけるプロとは?
(別サイト『月尾ボクシングジム物語』のボクシング・エッセイ)
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