日本では、ストーリー作成の基本として、
「起承転結(きしょうてんけつ)」
という方法が説かれています。
- 起 ……… 発端(話が始まる)
- 承 ……… 話が進む
- 転 ……… 意外な展開になる(盛りあがる)
- 結 ……… 落ち(話がまとまる)
マンガの世界では「起承転結」をたいへん重視しています。
プロであれアマチュアであれ、マンガを描く人は、初心者の段階で「起承転結」をたたき込まれていると思います。
小説やシナリオの世界では――
アメリカでは特にそうなのですが、
「シンデレラ曲線」
というストーリーライン(話の流れ)を基本にしています。
シンデレラ曲線というストーリー作成法
簡単に説明すると、こんな感じです。
**********
① 物語がはじまる
② シンデレラが家庭内でいじめられている日常。(平坦、もしくはゆるやかな下降)
③ 舞踏会に参加して、王子様と踊る(盛りあがる)
④ 王子様に恋をしたシンデレラは、もとの貧しい生活にもどり、みじめな境遇と、むくわれない想いによって、なげき悲しむ(どん底まで落ちる)
⑤ ガラスの靴によって、シンデレラに最高の幸せが訪れる(最高潮に盛りあがる)
⑥ 王子様と結ばれてハッピーエンド(完結する。大団円)
**********
このストーリーの流れ――物語の起伏(浮き沈み)が、アメリカでもっとも多く使われているプロット作成法なんですね。
実際、ハリウッドで製作された映画を意識して観ると、ほとんどすべてのハリウッド映画が、シンデレラ曲線によってストーリーの流れがつくられていることに気づかされます。
ページ内目次
シンデレラ曲線で重要なのは、先ほどの図で言うと、④と⑤の部分です。
さらに言うと、いちばん重視しているのが、④の落とす部分です。
「クライマックスで盛りあげるために、その直前に徹底的に落としておく」
それが、シンデレラ曲線でもっとも重視されている部分であり、この手法の最大の特徴でもあるんですね。
この手法は、海外(特にアメリカ)では深く浸透しているストーリー作成法です。
アメリカのホラー作家、ディーン・R・クーンツ氏も『ベストセラー小説の書き方』という本のなかで、情け容赦をせずに主人公をとことん追い詰めることを、さかんに説いています。
どん底まで落としておくと、対比の効果によって、そのあとのクライマックスがよりエキサイティングに盛りあがるからです。
※『ベストセラー小説の書き方』 ディーン・R・クーンツ:著 大出健:訳 朝日文庫(1996年)
日本では「起承転結」がストーリーラインの基本として説かれているように、欧米では(特にアメリカでは)シンデレラ曲線のストーリー作成法が『王道』と言えるくらい権威のある基本なんですね。
そういう意味では、「アメリカ的な手法」と言うことができるのかもしれませんね。
※悲劇(ハッピーエンドで終わらない物語)の場合は、起伏のパターンを逆に使います。
④で、幸福の絶頂になる――
⑤で、深い悲しみに落ちる――
といったように。
「そっか……じゃあプロットをつくるときは、『シンデレラ曲線』になるようにストーリーの流れをつくればいいんだな」
そのように思った人もいるかもしれませんが……
「起承転結」や「シンデレラ曲線」は、あくまでも『基本』であって、絶対的な『型』ではありません。
作家修業をしている人は、シンデレラ曲線を『型』にして物語をつくる練習をしておくと、良い経験になります。
ですが、この『型』どおりにつくった物語を人に読んでもらった場合、好ましい評価が返ってくるとはかぎりません。
ハリウッドの映画界では、かなり前から「ネタ切れ」が指摘されていて、海外の映画をハリウッドでリメイクしたり、監督や脚本家などの主要スタッフを海外から招くケースがとても多くなっています。
ハリウッド映画が「ネタ切れ」を起こした要因はいくつかあるのですが、そのひとつに、
「アメリカ人の監督や脚本家は、シンデレラ曲線の『型』にはまっているため『型』どおりの映画しかつくれない」
ということがあるんですね。
正直、シンデレラ曲線どおりの物語はすでに飽きられています。
これを『型』にしてストーリーを組むと、
「ありきたりで陳腐(ちんぷ)」
と評価されるリスク(危険性)があるんですね。
「シンデレラ曲線」や「起承転結」は、優れた『基本』であることはたしかです。
ですが、「万能な『型』ではない」ということはかならず理解しておきましょう。
また、シンデレラ曲線の手法をそのまま小説で活用した場合、日本の読者には好まれない可能性があります。
たとえば、日本の読者には、
「海外小説が苦手――特にアメリカの小説は、最初のほうを読んだだけで挫折する」
という人が少なくありません。
僕のまわりにもたくさんいます(苦笑
アメリカの小説が敬遠される最大の理由――
それは、「シンデレラ曲線の手法で書かれているから」なんですね。
シンデレラ曲線の手法で小説を書いた場合、先ほどの図で言うところの①~②(はじまりから日常の描写)にあたる部分で、物語の舞台の説明や、登場人物の紹介を、一気にまとめておこないます。
日本の作家の場合は「つかみが大事」だと思っているので、冒頭で退屈させるような書き方はしません。
舞台や登場人物の細かい設定については中盤以降に語られるようにして、冒頭や序盤で飽きられない(最初のインパクトで物語にひきこむ)ための工夫をしています。
日本の読者はシンデレラ曲線の手法で書かれた小説には慣れていないので、アメリカの作品を読むと、どうしても序盤のところで挫折しやすいですよね。
ですが、シンデレラ曲線で書いた小説には大きなメリットもあります。
序盤で舞台や登場人物の説明をすべて済ませているので、中盤以降はいっさいだれることなく、加速度的に物語が展開します。
実際、アメリカでヒットしている小説は、
「最初の説明部分をがまんして読めば、中盤以降はおもしろくて読むのがとまらなくなる」
という作品がとても多いです。
こういうことは、やっぱり善し悪しですよね。
とはいえ、日本では「つかみ」が退屈な書き方をすると、読者に敬遠されてしまいます。
シンデレラ曲線をそのまま小説に使うのはリスクが高いので、使うときには冒頭や序盤でだれないようにする工夫が必要です。
ストーリーラインを組むにあたって心得ておくべきなのは、
「物語には、起伏(浮き沈み)が必要」
ということに尽きると思います。
シンデレラ曲線は万能な『型』ではありませんが、
「どうすれば物語に効果的な起伏をつくることができるのか?」
その指針となるものです。
作家修行をしている人は、ぜひ参考になさってみてください。
※関連しているお話として、こちらもご参考ください
→「物語の起伏」は、事件やトラブルが起こらなくてもつくれる?
※基本をくずしたストーリーラインついては、こちらをご参考ください
→手塚治虫先生の『火の鳥』から、物語づくりの高等テクニックを学ぼう
※プロット(物語)作成に関するほかのお話は、こちらからお探しください
→プロット(ラベル)
更新
2018年10月5日 リンクを追加。
2019年1月3日 商品画像を変更。
2019年12月7日 リンクを追加。
シンデレラ曲線の特徴
シンデレラ曲線で重要なのは、先ほどの図で言うと、④と⑤の部分です。
- クライマックスの直前で、どん底まで落とす(④の部分)
- クライマックスで、めいっぱい盛りあげる(⑤の部分)
さらに言うと、いちばん重視しているのが、④の落とす部分です。
「クライマックスで盛りあげるために、その直前に徹底的に落としておく」
それが、シンデレラ曲線でもっとも重視されている部分であり、この手法の最大の特徴でもあるんですね。
この手法は、海外(特にアメリカ)では深く浸透しているストーリー作成法です。
アメリカのホラー作家、ディーン・R・クーンツ氏も『ベストセラー小説の書き方』という本のなかで、情け容赦をせずに主人公をとことん追い詰めることを、さかんに説いています。
どん底まで落としておくと、対比の効果によって、そのあとのクライマックスがよりエキサイティングに盛りあがるからです。
※『ベストセラー小説の書き方』 ディーン・R・クーンツ:著 大出健:訳 朝日文庫(1996年)
日本では「起承転結」がストーリーラインの基本として説かれているように、欧米では(特にアメリカでは)シンデレラ曲線のストーリー作成法が『王道』と言えるくらい権威のある基本なんですね。
そういう意味では、「アメリカ的な手法」と言うことができるのかもしれませんね。
※悲劇(ハッピーエンドで終わらない物語)の場合は、起伏のパターンを逆に使います。
④で、幸福の絶頂になる――
⑤で、深い悲しみに落ちる――
といったように。
シンデレラ曲線は『王道』だけど、万能な『型』ではない
「そっか……じゃあプロットをつくるときは、『シンデレラ曲線』になるようにストーリーの流れをつくればいいんだな」
そのように思った人もいるかもしれませんが……
「起承転結」や「シンデレラ曲線」は、あくまでも『基本』であって、絶対的な『型』ではありません。
作家修業をしている人は、シンデレラ曲線を『型』にして物語をつくる練習をしておくと、良い経験になります。
ですが、この『型』どおりにつくった物語を人に読んでもらった場合、好ましい評価が返ってくるとはかぎりません。
ハリウッドの映画界では、かなり前から「ネタ切れ」が指摘されていて、海外の映画をハリウッドでリメイクしたり、監督や脚本家などの主要スタッフを海外から招くケースがとても多くなっています。
ハリウッド映画が「ネタ切れ」を起こした要因はいくつかあるのですが、そのひとつに、
「アメリカ人の監督や脚本家は、シンデレラ曲線の『型』にはまっているため『型』どおりの映画しかつくれない」
ということがあるんですね。
正直、シンデレラ曲線どおりの物語はすでに飽きられています。
これを『型』にしてストーリーを組むと、
「ありきたりで陳腐(ちんぷ)」
と評価されるリスク(危険性)があるんですね。
「シンデレラ曲線」や「起承転結」は、優れた『基本』であることはたしかです。
ですが、「万能な『型』ではない」ということはかならず理解しておきましょう。
シンデレラ曲線のパターンをそのまま小説で使うと、日本では敬遠される可能性がある
また、シンデレラ曲線の手法をそのまま小説で活用した場合、日本の読者には好まれない可能性があります。
たとえば、日本の読者には、
「海外小説が苦手――特にアメリカの小説は、最初のほうを読んだだけで挫折する」
という人が少なくありません。
僕のまわりにもたくさんいます(苦笑
アメリカの小説が敬遠される最大の理由――
それは、「シンデレラ曲線の手法で書かれているから」なんですね。
シンデレラ曲線の手法で小説を書いた場合、先ほどの図で言うところの①~②(はじまりから日常の描写)にあたる部分で、物語の舞台の説明や、登場人物の紹介を、一気にまとめておこないます。
読者は、冒頭の部分で「物語の設定を長々と読まされている」というような状態になります。
日本の作家の場合は「つかみが大事」だと思っているので、冒頭で退屈させるような書き方はしません。
舞台や登場人物の細かい設定については中盤以降に語られるようにして、冒頭や序盤で飽きられない(最初のインパクトで物語にひきこむ)ための工夫をしています。
日本の読者はシンデレラ曲線の手法で書かれた小説には慣れていないので、アメリカの作品を読むと、どうしても序盤のところで挫折しやすいですよね。
ですが、シンデレラ曲線で書いた小説には大きなメリットもあります。
序盤で舞台や登場人物の説明をすべて済ませているので、中盤以降はいっさいだれることなく、加速度的に物語が展開します。
実際、アメリカでヒットしている小説は、
「最初の説明部分をがまんして読めば、中盤以降はおもしろくて読むのがとまらなくなる」
という作品がとても多いです。
こういうことは、やっぱり善し悪しですよね。
とはいえ、日本では「つかみ」が退屈な書き方をすると、読者に敬遠されてしまいます。
シンデレラ曲線をそのまま小説に使うのはリスクが高いので、使うときには冒頭や序盤でだれないようにする工夫が必要です。
ストーリーの流れで重要なのは、起伏をつくること
ストーリーラインを組むにあたって心得ておくべきなのは、
「物語には、起伏(浮き沈み)が必要」
ということに尽きると思います。
シンデレラ曲線は万能な『型』ではありませんが、
「どうすれば物語に効果的な起伏をつくることができるのか?」
その指針となるものです。
作家修行をしている人は、ぜひ参考になさってみてください。
※関連しているお話として、こちらもご参考ください
→「物語の起伏」は、事件やトラブルが起こらなくてもつくれる?
※基本をくずしたストーリーラインついては、こちらをご参考ください
→手塚治虫先生の『火の鳥』から、物語づくりの高等テクニックを学ぼう
※プロット(物語)作成に関するほかのお話は、こちらからお探しください
→プロット(ラベル)
更新
2018年10月5日 リンクを追加。
2019年1月3日 商品画像を変更。
2019年12月7日 リンクを追加。
2024年1月7日 記事内の広告を削除。
2024年7月14日 ページ内目次を追加。一部、文章を加筆・修正。画像の複製を追加。