2018年1月25日木曜日

初心者でも「おもしろい小説」をつくることは可能なのか?


 当サイトにて、「小説の練習法」をいくつかご紹介いたしましたが……。

こちらをご参照ください。
小説の練習法(ラベル)

 なかには、これらの記事を読んで、

「物語をつくるのって、やっぱりむずかしそうだな……」
「小説を書くには、長い年月をかけて修行しないとダメだよな……」
「初心者の私に、『おもしろい小説』が書けるわけないよな……」

 そんなふうに感じて、腰が引けてしまった人もいるかもしれませんが――

 実際は、そんなことありません(笑

 創作のテクニックを知らず、技術的には未熟であっても、「おもしろい小説」を書くことはできます。
 なぜなら、読者が「おもしろい」と感じる小説は、『秀作(出来のいい作品)』ではなく、『力作』のほうだからです。


『秀作』か『力作』か? 小説は初心者でも勝負できる世界


 このことがわかっていなかったために、僕の場合はずいぶん遠まわりをしました(苦笑

 僕は、作家を志したときに、
「うまくなれば、おもしろい小説が書けるようになる」
 と信じ込んでいました。

 そして、「うまくなる」ために、小説の書き方、物語の創作法、日本語の文章について勉強しました。
 表現上のテクニックを知識としてたくわえ、練習を積み重ねました。
 テクニックを体得することに長い年月を費やしたんですね。

 その結果――

 たしかに、うまくはなりました。
 ですが、「良く出来ている」だけであって、おもしろくありません(汗

「うまくなれば、おもしろい小説が書けるようになる」
 と信じて努力したにもかかわらず、つくる作品が『おもしろさ』からどんどんかけ離れてしまったんですね(瀧汗


 僕のこの失敗経験が意味していることは、次のとおりです。

  • 「うまい小説(良く出来ている小説)」と「おもしろい小説」は、別物である
  • 読者が求めているのは、『秀作(出来のいい作品)』ではなく、『力作』のほうである


 小説を書く目的が、
「良く出来てるね」
「上手(じょうず)だね」
 と人に褒められることの場合は、出来の良さを追求した『秀作』を目指すのも良いでしょう。

 ですが、多くの作家は、
「読んでくれる人たちを楽しませたい」
 という想いをベースに創作にあたっていると思います。

 その場合は、「うまさ」や「出来の良さ」よりも、『力作』を目指したほうが賢明だと思います。

『力作』は、初心者でもつくれます。
 テクニックの有無は、関係ないからです。

 全身全霊でつくりあげた作品――
 特別な『想い』を込めた作品――
 作家自身が、夢中になりながらつくりあげた作品――

 そういった作品は、『力作』になります。
 読者が「おもしろい」と感じる小説になります。

 書き手のエネルギーが、作品から伝わってくるからです。


『秀作』と『力作』は両立できる?


 いま、このお話を読んで、

「『秀作』と『力作』は別物だって言ってるけど、このふたつは両立できるんじゃないのか? テクニックを身につけたうえで心を込めた作品づくりをすれば、『出来が良くて、おもしろい小説』に仕上がるはずだ」

 そのように思った人もいるかもしれませんが……

 そのとおりです(笑

 テクニックを身につけている人が特別な『想い』を込めて創作すると、「出来の良さ」「おもしろさ」が両立した『傑作(けっさく)』になります

 ですので……

 テクニックは、あったほうがいいに決まってます(笑

 テクニックが洗練されているほど、作品の完成度は高くなります。
 作家は生涯(しょうがい)を通じて、テクニックをみがく努力をつづけるべきなんだと思います。


 ただね――

 テクニックというのはやっかいなもので、身につけることができたら今度は、
「知らないほうが良かった……」
 と思う日がきたりするんですね(苦笑

 人は、
「テクニックを知っていると、やたらとテクニックを使いたがる」
 という心理が働くからです。

 テクニックを知っているために、無意識的に「技巧にはしった創作」をしてしまうんですね。
 その結果、「良くできているけど、おもしろくない」という作品になってしまい、それがひどくなると、
「テクニックをひけらかしてばかりで鼻持ちならない」
 という作品になってしまうことさえあるんですね。

 僕自身、おもいっきりハマッたことがあります(汗

 なまじテクニックをおぼえたせいで、書き手の『想い』や『エネルギー』が伝わってこない「技巧にはしった作品」しかつくれなくなってしまったんですね。


『力作』をつくるには


 僕は、その状態から抜けだすために、次のようなことを心がけるようにしました。

**********
身につけたテクニックは、創作のあいだは忘れる
 忘れることで、身につけたテクニックが自然なかたちでほどよく活かされるようになる。

モチーフ(おおもとのアイデア)やテーマ(主題)を紙に書いて机に貼り、創作のあいだずっと念頭におく
 創作のすべての工程に『想い』が込められるようにする。

テクニックが「おもしろさ」を打ち消していると感じた場合は、かならず「おもしろさ」のほうを優先させる
「表現が稚拙(ちせつ)だ」と思われるリスクをおかしてでも、心が揺さぶられるようなストーリー展開や表現方法を選択する。
**********


 僕の場合は、こんな感じで遠まわりをしたのですが――

 これらのことを初心者のときから心がけていれば、僕のような回り道をすることはないと思います。

「おもしろい作品」をつくりつづけながら、少しずつテクニックを身につけていき、やがて「おもしろさ」と「出来の良さ」が両立した『傑作』を生みだせるようになる――

 そんな理想的なプロセスが、可能になると思います。

『力作』は、初心者でもつくれます。
 テクニックよりも、『想い』の強さが重要だからです。
 必要なのは、作者の「思い入れ」だけです。

 物語に対する「思い入れ」を大事にして、『力作』をつくりつづけながら、少しずつテクニックをおぼえていく――

 そのプロセスを歩めば、あなたの創作活動は、「成功」から「さらなる成功」をくり返す、理想的な作家人生になると思います。


未熟でもかまわない 『想い』が込められた作品には、読者の心を揺さぶるエネルギーがある


 まだ創作をはじめたばかりの人は、がんばって作品を書きあげても、
「私が書いた未熟な作品なんて、人に読んでもらう価値はない……」
 そう思い込んで、誰にも見せることなくみずからお蔵入りにしてしまうことがあります。

 ですが、未熟さに引け目を感じる必要なんてありません。
 小説の世界は、テクニックがなくても充分に勝負できるからです。

 自分のなかから生まれた物語に、夢中になりましょう。
 ありったけの心を込めて創作しましょう。
 未熟さは、作品に対する『想い』の強さでカバーしましょう。

 そうやってつくりあげた作品には、特別なエネルギーがあります。
 読者の心を揺さぶる強いエネルギーがあります。

『想い』を込めてつくりあげたのなら、ためらわずに公開したほうが賢明だと思います。
 その作品は、作者であるあなたが思う以上に、読者にとって「おもしろい作品(心が動かされる物語)」だからです。


[おまけ] 想いを込めるとは?


 最後に、[おまけ]として――

「作品に想いを込めろって言ってるけど、『想いを込める』ってどういうことなんだ?」
 と疑問に思った人のために、僕が以前に公開していた電子書籍から抜粋を。


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 それじゃあ、「想い」を込めるって、どういうことなんだろう?

 その答えは簡単です。
 感情をともなわせること――それが、「想い」を込めるということです。

『〈いま幸せ〉を実践する方法』 第一章 潜在意識の基礎知識(『暗示』が潜在意識を使う基本)より。
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 あなたの『おもしろい』と思う感情――
 あなたの『好き』という想い――
 あなたの胸を躍らせている『感動』や『興奮』――

 それらの感情が創作の過程でともなうとき、あなたの作品に『想い』が込められます。
 あなたの心的エネルギーが作品にそそがれます。

 技巧を超越した『力作』を生みだすための参考になさってみてください。