海外ドラマを観ていると、劇中の刑事が、
「殺人課」
という部署に所属していることがよくあります。
ですが、「殺人課」と聞いて、
「?????」
と思う人も多いかと思います。
日本の警察には「殺人課」という部署は存在していないからです。
「殺人課」と「捜査一課」のちがい
- 殺人課 …… アメリカなど、海外では殺人事件がおこると、警察の「殺人課」の刑事が捜査を担当します。
- 捜査一課 …… 日本では、殺人事件がおこると、地方警察本部の「刑事部 捜査一課」という部署が捜査を担当します。
日本には「殺人課」という殺伐(さつばつ)とした名称の部署はありません。
地方警察本部の「捜査一課(そうさ・いっか)」が、殺人事件を捜査します。
地方警察本部 東京は警視庁
地方警察本部の呼び名は、
- 県の場合は、○○県警察本部(県警本部)
- 府の場合は、○○府警察本部(府警本部)
- 北海道は、北海道警察本部(道警本部)
- 東京は、警視庁
東京だけ「~警察本部」という名称ではありません。
「警視庁(けいしちょう)」が東京の警察本部です。
「警視庁」という言葉の響きから、全国の警察を統括していると思ってしまいがちですが、実際は東京だけが管轄です。
地方警察本部の捜査課
「捜査一課」では、殺人だけでなく、強盗や放火などの凶悪事件全般を担当します。
ですので、日本のミステリー小説で活躍するのは、ほとんどの場合「捜査一課」の刑事(私服警察官)になりますね。
ちなみに、ほかの捜査課はこのような担当になっています。
- 捜査二課 …… 詐欺、横領、贈収賄などの経済犯罪や知能犯罪
- 捜査三課 …… 空き巣、スリなどの窃盗事件
- 捜査四課 …… 組織暴力団
殺人事件の刑事は、それほど危険じゃない?
余談になりますが、『刑事コロンボ』のノベライズ(小説化)作品のなかで、ロサンゼルス市警察の殺人課に所属しているコロンボ警部が、こんなことを言っています。
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「<上略>正直言いますとね、そんな恐ろしい仕事じゃないんです。あたしが登場するのは、いつも事件が起きたあとです。強盗課や麻薬課や暴力犯取締課の連中とはわけがちがいます。撃ち合いや格闘の現場に立ち会うなんてことはまずありません。<下略>」出典:『刑事コロンボ 死者のメッセージ』 W・リンク、R・ロビンソン:著 野村光由:訳 二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション(1988年)
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コロンボ警部は、殺人事件を担当する刑事(警察官)は、それほど危険じゃないと言っていますね。
ドンパチや格闘をするのは、強盗や麻薬、暴力犯罪を捜査している刑事だと言っています。
日本では殺人事件も強盗事件も「捜査一課」が担当しますが、もしあなたが「刑事もののミステリーを書きたい」と思っているのであれば、
- 頭脳的な犯罪捜査をメインにしたものは、殺人事件の捜査
- アクション満載の刑事ドラマの場合は、強盗事件の捜査
ということを意識してプロット(物語の構想)を練ると、スムーズに物語がつくれるかもしれませんね。
※プロットの意味については、こちらをご参考ください。
→小説における「プロット」とは?
※よろしければ、こちらの記事もご参考ください。
→「捜査」と「調査」のちがい
→「容疑者」と「被疑者」、「被告人」のちがい
→推理小説の対極はハードボイルド?
更新
2019年8月26日 リンクを追加。文章表現を一部改訂。
2024年9月22日 ラベル「ミステリー」を削除。