2018年1月4日木曜日

「殺人課」と「捜査一課」


 海外ドラマを観ていると、劇中の刑事が、
「殺人課」
 という部署に所属していることがよくあります。

 ですが、「殺人課」と聞いて、
「?????」
 と思う人も多いかと思います。

 日本の警察には「殺人課」という部署は存在していないからです。


「殺人課」と「捜査一課」のちがい


  • 殺人課 …… アメリカなど、海外では殺人事件がおこると、警察の「殺人課」の刑事が捜査を担当します。
  • 捜査一課 …… 日本では、殺人事件がおこると、地方警察本部の「刑事部 捜査一課」という部署が捜査を担当します。

 日本には「殺人課」という殺伐(さつばつ)とした名称の部署はありません。
 地方警察本部の「捜査一課(そうさ・いっか)」が、殺人事件を捜査します。


地方警察本部 東京は警視庁


 地方警察本部の呼び名は、
  • 県の場合は、○○県警察本部(県警本部)
  • 府の場合は、○○府警察本部(府警本部)
  • 北海道は、北海道警察本部(道警本部)
  • 東京は、警視庁

 東京だけ「~警察本部」という名称ではありません。
「警視庁(けいしちょう)」が東京の警察本部です。

「警視」という言葉の響きから、全国の警察を統括していると思ってしまいがちですが、実際は東京だけが管轄です。


地方警察本部の捜査課


「捜査一課」では、殺人だけでなく、強盗や放火などの凶悪事件全般を担当します。
 ですので、日本のミステリー小説で活躍するのは、ほとんどの場合「捜査一課」の刑事(私服警察官)になりますね。

 ちなみに、ほかの捜査課はこのような担当になっています。

  • 捜査二課 …… 詐欺、横領、贈収賄などの経済犯罪や知能犯罪
  • 捜査三課 …… 空き巣、スリなどの窃盗事件
  • 捜査四課 …… 組織暴力団


殺人事件の刑事は、それほど危険じゃない?


 余談になりますが、『刑事コロンボ』のノベライズ(小説化)作品のなかで、ロサンゼルス市警察の殺人課に所属しているコロンボ警部が、こんなことを言っています。

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「<上略>正直言いますとね、そんな恐ろしい仕事じゃないんです。あたしが登場するのは、いつも事件が起きたあとです。強盗課や麻薬課や暴力犯取締課の連中とはわけがちがいます。撃ち合いや格闘の現場に立ち会うなんてことはまずありません。<下略>」

出典:『刑事コロンボ  死者のメッセージ』 W・リンク、R・ロビンソン:著 野村光由:訳  二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション(1988年)
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 コロンボ警部は、殺人事件を担当する刑事(警察官)は、それほど危険じゃないと言っていますね。
 ドンパチや格闘をするのは、強盗や麻薬、暴力犯罪を捜査している刑事だと言っています。


 日本では殺人事件も強盗事件も「捜査一課」が担当しますが、もしあなたが「刑事もののミステリーを書きたい」と思っているのであれば、

  • 頭脳的な犯罪捜査をメインにしたものは、殺人事件の捜査
  • アクション満載の刑事ドラマの場合は、強盗事件の捜査

 ということを意識してプロット(物語の構想)を練ると、スムーズに物語がつくれるかもしれませんね。


プロットの意味については、こちらをご参考ください。
小説における「プロット」とは?

よろしければ、こちらの記事もご参考ください。
「捜査」と「調査」のちがい
「容疑者」と「被疑者」、「被告人」のちがい
推理小説の対極はハードボイルド?


更新
2019年8月26日 リンクを追加。文章表現を一部改訂。