2018年7月3日火曜日

PCメガネ(パソコン用メガネ)に効果はあるのか? (本条克明の考察)


 今回は「作家の道具」の番外編を。
番外編なので、「作家の道具」のカテゴリ外です。


 現代の作家の多くは、手書きではなく、ワープロで原稿を書いています。
 もちろん、僕もそうです。

 一日10時間以上、パソコンに向かっていることなんて当たり前――
 そんな生活をしているので、かなり目を酷使しています。

 たしか5年ぐらい前だったと思うのですが、わずかでも目の負担を軽減させたくて、ちまたで話題になっていたPCメガネ(パソコン用メガネ)を購入しました。

 PCメガネの効果については、おもいっきり賛否両論です。

 今回は、僕が実際に使ってみた経験もふくめて、
「PCメガネの効果」
 について、考えてみました。


PCメガネの効果について (本条克明の考察)


 PCメガネは、「ブルーライト(青い光)をカットすることによって、目の疲れを軽減させる」というもの――

 ブルーライトを100パーセントカットできるわけではなく、商品によってカット率が異なっています。
 購入する場合は、事前に確認するようにしましょう。


 このPCメガネは、
ブルーライト(青い光)が目にはいると、目にわるい影響がある」
 という理論にもとづいて開発されたものです。

 この時点で、すでに賛否がわかれているんですね。


ブルーライトはカットしなければならない (PCメガネの肯定)


ブルーライトが目にわるい」という人は、何を根拠に言っているのでしょう?

 それは、光の波長を根拠にそう主張しているんですね。

「七色の光り」という表現があるとおり、光(可視光線)の色は7種類です。


オレンジ
黄色

青(水色)
藍色(濃い青)

 この色相の区別のしかたが日本では一般的です。
国や文化によって色相の分け方(表現のしかた)が異なっています。

がもっとも波長が長く、
がもっとも波長が短い

 よりも波長が長くなってしまうと人の目には見えなくなり、赤外線になります。
 よりも波長が短くなると、やはり人の目には見えなくなり、紫外線になります。

 紫外線が有害であることは、すでにご存じのとおりです。
 そのため、

可視光線のなかで紫外線に近い光――
可視光線のなかでもっとも波長の短い光が有害であり、直接それを見るのは目によくない

 という理論が生まれ、青い光(ブルーライト)が目に有害だという意見がだされるようになったんですね。


 いま、これを読んで、
「おい、ちょっと待て!」
 と思った人もいるかもしれませんね(笑

「可視光線のなかでもっとも波長が短いのは、じゃなくてだろう。なんでを目のかたきにしてるんだ?」

 じつは、その理由はとても単純です。

 たしかに可視光線のなかでもっとも波長が短いのはなのですが、紫の光はごくわずかしか存在していないので、事実上、がもっとも波長の短い光になるんですね。

 液晶ディスプレイの場合は、光の三原色――RGB()を混ぜ合わせることで色をつくっています。
 色のもとになっている原色なかで、がもっとも波長の短い色になります。


 このような理論により、
「波長の短い『青い光』は危険」
「だから、目の健康のためにブルーライトをカットする」
 という流れになっていったんですね。


 ここまで読むと、
「なるほど、説得力あるじゃないか。やっぱりブルーライトは危険だし、PCメガネは効果ありそうだな」
 と思いたくなりますよね。

 でもね――

 これに反対する意見も、おなじぐらい説得力があったりするんですよね。


ブルーライトは有害ではない (PCメガネの否定)


 そもそも「青い光は人体に有害」という理論そのものが、まちがっているのではないか?

 反対意見を唱える人たちは言います。
 というのも、科学的・医学的にはまだ「青の光が目に有害」ということが立証されていないからです。
 あくまでも仮説なんですね、これ。

 PCメガネを否定する人たちは、
「青い光は、有害ではない」
 と主張します。

 なぜか?

 それは、私たちをとりまくこの世界(地球)には、もともと青い光で満ちあふれているからです。

 空は何色でしょう?
 海は何色でしょう?

 そう、私たちはずっと青い光とともに生きてきたんですね。
 それを、いまになって青い光が有害だなんて、道理に合いません。


 ちなみに、この世界(地球上)に青い光が多い理由は――

 2013年1月26日、NHK Eテレで放送された、
『MIT白熱教室』(第4回「空はなぜ青く 夕焼けはなぜ赤いのか?」)
 という番組のなかで、ウォルター・ルーウィン教授がこのように説明しています。

*****
「太陽の光がとおる大気には、きわめて小さな0.1ミクロンよりも微細な粒子がただよっている。
 ――〈中略〉――
 太陽の光はこうした小さな粒子に当たって飛び散り、散乱する。
 太陽光のなかでも青い光は、赤い光の5倍も散乱しやすい。
 この現象を『レイリー散乱』と呼ぶ」
*****

 可視光線のなかで、波長の短い光ほど多く散乱します。
 そのため、この地球上には青い光で満ちあふれているんですね。


 このように、この世界(地球上)は青い光でいっぱいです。
 つまり、青い光は自然な光であり、私たちにとってもっとも身近な光なんですね。

 そのため、
青い光は有害ではない」
ブルーライトをカットする意味なんてない」
 という反対意見があがっているんですね。

 PCメガネを否定する意見のなかで、僕が知るかぎり、これがもっとも説得力のある主張です。


効果の是非は……


 さて――

PCメガネを肯定する主張、
PCメガネを否定する主張、
あなたはどちらの意見が正しいと思いますか?


「なんだよ、読者に丸投げするのかよ!」
 と思った人もいるかもしれませんが、これについては科学的・医学的な決着がついていないことなので、僕には結論をだせません。

 現時点において、効果の是非は、
「人それぞれ信じたいほうを信じたほうがいい」
 ということになります。

 ここで肯定意見と否定意見の両方を提示しましたので、哲学的思考を使い、あなた自身で答えをだしてみてください。

哲学的思考のやり方については、こちらをご参考ください。
総合的に考える方法① (自分の頭で考える哲学的思考法3)
総合的に考える方法② (自分の頭で考える哲学的思考法4)


 ちなみに僕の場合は、どちらなのかと言うと……

 効果は感じられなかったなぁ(苦笑

 これは、「実際に使ってみた実感」なのですが、僕の場合はPCメガネをしていても、やっぱりおなじように目が疲れましたね。

 それよりも、
「モニターの設定を変えて、明るさを少し落とす」
「画面から少しはなれてタイピングする」
 ということをやったときのほうが、効果を実感できました。
あくまでも個人の意見です。


 PCメガネをかけると青が抑えられるため、色の感覚にズレが生じてしまいます。
 そういうこともあって、いまはもうパソコンをやるときにはPCメガネを使っていません。

 仕事道具として使っていないので、今回のお話は「作家の道具」のカテゴリから除外いたしました。


本来とはちがう場面で活用


 ただ、まったく使っていないわけじゃなく、べつの用途で活用しています。

 紫外線のカットです。

 日差しの強い日中に外出すると、紫外線で目が痛くなったりするのですが、PCメガネをかけるとそれを軽減させることができます。

 以前はサングラスをかけるようにしていたのですが……
 サングラスだと、柄(がら)のわるい人みたいに見えてしまうので、かけるのをためらってしまうんですよね(苦笑

 PCメガネの場合、レンズの色は完全な透明ではなく、やや黄色っぽいというか、微妙に薄茶色がかかっていて少し色がついているのですが、外でかけるとほとんど透明に見えるので、ふつうのメガネっぽくなります。
レンズの色の濃さは商品によって異なります。

 実際、PCメガネをかけていると目が痛くならないので、あるていど紫外線をカットしてくれているんだと思います。

 そんな感じで、本来とはちがう用途でPCメガネを重宝(ちょうほう)しています(笑


更新
2018年8月8日 RGBの表記が大文字と小文字の混在になっていたのを大文字で統一。