今回は「作家の道具」の番外編を。
※番外編なので、「作家の道具」のカテゴリ外です。
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現代の作家の多くは、手書きではなく、ワープロで原稿を書いています。
もちろん、僕もそうです。
一日10時間以上、パソコンに向かっていることなんて当たり前――
そんな生活をしているので、かなり目を酷使しています。
たしか5年ぐらい前だったと思うのですが、わずかでも目の負担を軽減させたくて、ちまたで話題になっていたPCメガネ(パソコン用メガネ)を購入しました。
PCメガネの効果については、おもいっきり賛否両論です。
今回は、僕が実際に使ってみた経験もふくめて、
「PCメガネの効果」
について、考えてみました。
PCメガネの効果について (本条克明の考察)
PCメガネは、「ブルーライト(青い光)をカットすることによって、目の疲れを軽減させる」というもの――
ブルーライトを100パーセントカットできるわけではなく、商品によってカット率が異なっています。
購入する場合は、事前に確認するようにしましょう。
このPCメガネは、
「ブルーライト(青い光)が目にはいると、目にわるい影響がある」
という理論にもとづいて開発されたものです。
この時点で、すでに賛否がわかれているんですね。
ブルーライトはカットしなければならない (PCメガネの肯定)
「ブルーライトが目にわるい」という人は、何を根拠に言っているのでしょう?
それは、光の波長を根拠にそう主張しているんですね。
「七色の光り」という表現があるとおり、光(可視光線)の色は7種類です。
赤
オレンジ
黄色
緑
青(水色)
藍色(濃い青)
紫
オレンジ
黄色
緑
青(水色)
藍色(濃い青)
紫
この色相の区別のしかたが日本では一般的です。
※国や文化によって色相の分け方(表現のしかた)が異なっています。
赤がもっとも波長が長く、
紫がもっとも波長が短い
紫がもっとも波長が短い
赤よりも波長が長くなってしまうと人の目には見えなくなり、赤外線になります。
紫よりも波長が短くなると、やはり人の目には見えなくなり、紫外線になります。
紫外線が有害であることは、すでにご存じのとおりです。
そのため、
可視光線のなかで紫外線に近い光――
可視光線のなかでもっとも波長の短い光(青)が有害であり、直接それを見るのは目によくない
可視光線のなかでもっとも波長の短い光(青)が有害であり、直接それを見るのは目によくない
という理論が生まれ、青い光(ブルーライト)が目に有害だという意見がだされるようになったんですね。
いま、これを読んで、
「おい、ちょっと待て!」
と思った人もいるかもしれませんね(笑
「可視光線のなかでもっとも波長が短いのは、青じゃなくて紫だろう。なんで青を目のかたきにしてるんだ?」
じつは、その理由はとても単純です。
たしかに可視光線のなかでもっとも波長が短いのは紫なのですが、紫の光はごくわずかしか存在していないので、事実上、青がもっとも波長の短い光になるんですね。
液晶ディスプレイの場合は、光の三原色――RGB(赤・緑・青)を混ぜ合わせることで色をつくっています。
色のもとになっている原色なかで、青がもっとも波長の短い色になります。
このような理論により、
「波長の短い『青い光』は危険」
「だから、目の健康のためにブルーライトをカットする」
という流れになっていったんですね。
*
ここまで読むと、
「なるほど、説得力あるじゃないか。やっぱりブルーライトは危険だし、PCメガネは効果ありそうだな」
と思いたくなりますよね。
でもね――
これに反対する意見も、おなじぐらい説得力があったりするんですよね。
ブルーライトは有害ではない (PCメガネの否定)
そもそも「青い光は人体に有害」という理論そのものが、まちがっているのではないか?
反対意見を唱える人たちは言います。
というのも、科学的・医学的にはまだ「青の光が目に有害」ということが立証されていないからです。
あくまでも仮説なんですね、これ。
PCメガネを否定する人たちは、
「青い光は、有害ではない」
と主張します。
なぜか?
それは、私たちをとりまくこの世界(地球)には、もともと青い光で満ちあふれているからです。
空は何色でしょう?
海は何色でしょう?
そう、私たちはずっと青い光とともに生きてきたんですね。
それを、いまになって青い光が有害だなんて、道理に合いません。
ちなみに、この世界(地球上)に青い光が多い理由は――
2013年1月26日、NHK Eテレで放送された、
『MIT白熱教室』(第4回「空はなぜ青く 夕焼けはなぜ赤いのか?」)
という番組のなかで、ウォルター・ルーウィン教授がこのように説明しています。
*****
「太陽の光がとおる大気には、きわめて小さな0.1ミクロンよりも微細な粒子がただよっている。――〈中略〉――
太陽の光はこうした小さな粒子に当たって飛び散り、散乱する。
太陽光のなかでも青い光は、赤い光の5倍も散乱しやすい。
この現象を『レイリー散乱』と呼ぶ」
*****
可視光線のなかで、波長の短い光ほど多く散乱します。
そのため、この地球上には青い光で満ちあふれているんですね。
このように、この世界(地球上)は青い光でいっぱいです。
つまり、青い光は自然な光であり、私たちにとってもっとも身近な光なんですね。
そのため、
「青い光は有害ではない」
「ブルーライトをカットする意味なんてない」
という反対意見があがっているんですね。
PCメガネを否定する意見のなかで、僕が知るかぎり、これがもっとも説得力のある主張です。
効果の是非は……
さて――
PCメガネを肯定する主張、
PCメガネを否定する主張、
あなたはどちらの意見が正しいと思いますか?
PCメガネを否定する主張、
あなたはどちらの意見が正しいと思いますか?
「なんだよ、読者に丸投げするのかよ!」
と思った人もいるかもしれませんが、これについては科学的・医学的な決着がついていないことなので、僕には結論をだせません。
現時点において、効果の是非は、
「人それぞれ信じたいほうを信じたほうがいい」
ということになります。
ここで肯定意見と否定意見の両方を提示しましたので、哲学的思考を使い、あなた自身で答えをだしてみてください。
※哲学的思考のやり方については、こちらをご参考ください。
→総合的に考える方法① (自分の頭で考える哲学的思考法3)
→総合的に考える方法② (自分の頭で考える哲学的思考法4)
ちなみに僕の場合は、どちらなのかと言うと……
効果は感じられなかったなぁ(苦笑
これは、「実際に使ってみた実感」なのですが、僕の場合はPCメガネをしていても、やっぱりおなじように目が疲れましたね。
それよりも、
「モニターの設定を変えて、明るさを少し落とす」
「画面から少しはなれてタイピングする」
ということをやったときのほうが、効果を実感できました。
※あくまでも個人の意見です。
PCメガネをかけると青が抑えられるため、色の感覚にズレが生じてしまいます。
そういうこともあって、いまはもうパソコンをやるときにはPCメガネを使っていません。
仕事道具として使っていないので、今回のお話は「作家の道具」のカテゴリから除外いたしました。
本来とはちがう場面で活用
ただ、まったく使っていないわけじゃなく、べつの用途で活用しています。
紫外線のカットです。
日差しの強い日中に外出すると、紫外線で目が痛くなったりするのですが、PCメガネをかけるとそれを軽減させることができます。
以前はサングラスをかけるようにしていたのですが……
サングラスだと、柄(がら)のわるい人みたいに見えてしまうので、かけるのをためらってしまうんですよね(苦笑
PCメガネの場合、レンズの色は完全な透明ではなく、やや黄色っぽいというか、微妙に薄茶色がかかっていて少し色がついているのですが、外でかけるとほとんど透明に見えるので、ふつうのメガネっぽくなります。
※レンズの色の濃さは商品によって異なります。
実際、PCメガネをかけていると目が痛くならないので、あるていど紫外線をカットしてくれているんだと思います。
そんな感じで、本来とはちがう用途でPCメガネを重宝(ちょうほう)しています(笑
更新
2018年8月8日 RGBの表記が大文字と小文字の混在になっていたのを大文字で統一。
2024年11月12日 画像を追加。