季節の変わり目による寒暖差のため体調不良におちいり、更新が思うようにできていませんが……。
※読者の皆様も体調にご留意ください。
体の調子が良くないときは、おとなしく家で寝ているのがいちばん――
とはいえ、家にこもってばかりいると、ついひとり言が多くなってしまいます。
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近年、「ひとり言は脳に良い」という考え方がひろまってきています。
ビジネス関連の雑誌や、自己啓発書などでも、たびたびとりあげられています。
ですが、一般的にはまだ「ひとり言」にあまりいい印象はありません。
積極的にやろうという気持ちには、なかなかなれませんよね。
ひとり言は、本当に脳に良いのでしょうか?
だとしたら、私たちはもっとひとり言をつぶやくべきなのでしょうか?
ひとり言の効用
ページ内目次
ひとり言は不自然な行動?
私たちは、無意識のうちについひとり言を口にしてしまいます。
それは誰にでもあることなので、当たり前であるかのように思いがちですが、実際は、ひとり言というのはかなり奇妙な行動なんですね。
東京大学大学院総合文化研究科教授の岡ノ谷一夫(おかのや
かずお)先生は、出演したテレビ番組のなかでこのように語っています。
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「ひとり言ってね、動物としてはとても変な行動なんですよ。
人間しかしないですね。
動物は鳴きますけれども、鳴くときにかならず相手がいる。または相手がいることを想定して、ですよね。
人間の場合のひとり言は、逆に誰かいたらあまりしないですよね。
誰もいないときに、ぶつぶつ、ぶつぶつ」
出典:『又吉直樹のヘウレーカ!』 「独り言をつぶやくのはなぜ?」
NHK Eテレ 2018年12月19日放送
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ひとり言を言うのは人間だけ――
ひとり言を言う動物はいないので、そういう意味で、かなり不自然な行動だと言えます。
では、人はなぜひとり言をつぶやくのでしょう?
それはもちろん、ひとり言にメリット(利点)があるからです。
脳の活性化(メリット1)
ひとり言は、脳を活性化すると言われています。
頭のなかだけで考えているときよりも、考えを口にだしたほうが、脳の多くの領域を使うことになるからです。
頭のなかにあった考えは、言葉にして発することで「行動」になります。
その言葉を自分の耳で聞くことによって、聴覚も刺激されます。
それにより思考、感情、記憶、理解に関する脳の領域も刺激され、脳全体が活動します。
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たった一言のひとり言をつぶやいただけで、このようにほとんどすべての脳番地が活性化するわけです。
逆に言えば、ひとり言が多い状態は、脳が活発に働いている状態だということができます。
出典:『なぜうまくいく人は「ひとり言」が多いのか?』
加藤俊徳:著
クロスメディア・パブリッシング(インプレス) 2024年
(第二章の ひとり言はすべての脳番地を使っている より引用)
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口にださずに頭のなかで考えるより、ひとり言をつぶやいたほうが脳が活性化するので、考えがまとまったり、気持ち(感情)の整理がついたりするんですね。
それを無意識レベルで知っているからこそ、人はひとり言を口にしてしまうのだと推測されます。
対話効果(メリット2)
もうひとつの大きなメリットは「対話効果」です。
上述の番組のなかで、岡ノ谷先生はこのように言っています。
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「―<上略>―ひとり言っていうのは、自分との対話なんじゃないかっていうふうに思うんですよ。
実際ですね、ある研究でひとり言を頭のなかで動かしているときって、人と本当に対話しているときとおなじような脳の活動があるっていうことがわかっています。
ふつうの対話っていうのは相手と自分の対話だけど、ひとり言っていうのは自分のなかに自分をつくって、その自分と会話しているということじゃないかな、と、僕は思います」
出典:『又吉直樹のヘウレーカ!』 「独り言をつぶやくのはなぜ?」
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また、上述の書籍のなかで、加藤俊徳(かとう
としのり)先生は、次のように述べています。
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いずれにしても、ひとり言の本質とは、「もう一人の自分」との対話だと考えます。
ひとり言自体は、本人が言葉を発し、本人が聞いているだけですから、そこに他者は存在しません。しかし、本質的には自分の中に「もう一人の自分」がいて、その存在と会話しているのです。
その「もう一人の自分」は、私たちが考えている以上に知恵があり、直観力に優れ、勇気や良心に溢れている、とても頼りがいがある人物です。
出典:『なぜうまくいく人は「ひとり言」が多いのか?』
(第一章の 「もうひとりの自分」と対話する より引用)
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ひとり言というのは、「対話」をしているんですね。
実際に、ひとり言をつぶやいているときには、脳の対話に関する領域が活動します。
ひとり言は、自分のなかに設定した「もうひとりの自分」と対話をしています。
しかも、その「もうひとりの自分」は、知恵があり、頼りになる人物です。
その理由は、「もうひとりの自分」は、自分のことを客観的に見ているからです。
あなたがひとり言で対話をしている相手(もうひとりのあなた)は、あなたとは別の存在として設定されています。
つまり、あなたを客観視している存在なんですね。
自分のことを客観視することを「メタ認知」と言うのですが、ひとり言のときの「もうひとりの自分」は、まさにメタ認知をしています。
やっていることがスムーズにいかないときに、
「そうじゃないだろ、何やってんだ」
「いや待て、そっち側のほうを試してみろ」
といった言葉がおもわず口にでてしまったりしますが、これもメタ認知なんですね。
第三者(他者)の立場から、自分に向けてアドバイスをしているのですから。
人は、たとえ自分自身は欠点だらけでも、他人に対しては気の利いたアドバイスができるものです。
それは、客観的な立場から相手を見ているからです。
客観的な視点というのは、メタ(高次)の視点なんですね。
ひとり言をつぶやいているときは、「主観の自分」と「客観の自分」が言葉をかわしています。
「客観の自分」はメタ認知であるため、より良い判断をすることができます。
誰かがずっとそばについてアドバイスをしてくれる――
それと、おなじような効果が得られるんですね。
ひとり言にデメリットはないのか?
私は「脳に良いこと」が大好きなので、ひとり言を意識的に言うようにした時期があります。
どんなことであれ、メリットだけではなくデメリット(欠点)もあるものですが――
実際にひとり言を習慣にしてみて、デメリットにも気づくことができました。
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単純に、「人から変な目で見られる」ということが第一に挙げられます。
「ひとり言は脳に良い」という考えは、ビジネスや自己啓発の分野では浸透しつつあるのですが、まだ一般にはひろまっていません。
ひとり言をつぶやいていると、人から「変なやつ」と思われる可能性が高いです。
私自身は「名をすてて実をとる」という質(たち)なので、人からどう思われようがあまり気にしないのですが……
人にきらわれたり、人にさけられたりするリスクがあるので、人前ではひとり言を言わないほうが無難(ぶなん)だと思います。
※名をすてて実をとる(なをすてて・じつをとる) ……
人にどう思われるかよりも、実際に利益があるほうを選ぶこと。
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もうひとつのデメリットは、「ひとり言を口にだすと周囲の人が反応してしまう」ということです。
ひとり言を発すると、近くにいる人は自分に話しかけられたと思って、
「いま、なんて言った?」
といった感じで、反応します。
これ、まわりの人たちにとってはかなり迷惑です。
ひとり言が聞こえた人にしてみれば、
「用もないのに――私に話しかけているわけでもないのに、声をかけてきやがった」
ということになります。
こんなことを何回もくり返すと、さけられる可能性が大です。
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結論を言うと、
「人前では、ひとり言を言わないほうが良い」
ということですね。
ある意味、当たり前のことですけど(笑
ひとり言の代替として「日記を書く」という方法がある
ひとり言が脳を活性化することは確かなようです。
そして、ひとり言にはいつでもどこでもできるという利点があるのですが……。
実際には、まわりに人がいると、なかなかできませんよね。
ひとり言とおなじ効果があるものとして、「日記を書く」という方法があります。
その方法は、当サイトにてすでに公開しています。
(日記で、小説を書く練習をする方法 より)
この方法は、小説の文章力を高める練習法として公開したものなのですが、自分を客観視したり、自分と対話する効果がとても高いです。
ひとり言以上に「メタ認知」を高めることができますので、ひとり言に抵抗のある人には、この方法をおすすめします。
といっても、ひとり言みたいにいつでもどこでもできるわけではありませんけどね。
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ひとり言にせよ、書く方法にせよ、実践(じっせん)するときには、
「できるだけポジティブ(肯定的)なことを言う」
を心がけるようにしましょう。
脳が活性化する方法なので、ネガティブな言葉ばかりだとそれが増幅(ぞうふく)されてしまい、否定の連鎖におちいる可能性があります。
ですが、ポジティブな言葉を多く使うように心がけると、脳の活性化による効果で、どんどん前向きになることができます。
こういうことは、良いほうに活用しないとね(笑
あなたのポジティブな言葉が、あなたを幸せへと導(みちび)く
それは、脳科学的な真実なのですから。
※脳に良いに関するほかのお話
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なぜうまくいく人は「ひとり言」が多いのか?
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更新
2024年10月23日 リンクを追加。