人間の『心』の構造モデルに、「意識の三層」があります。
このモデルを提唱したのは心理学における大家(たいか)のひとり、カール・グスタフ・ユングです。
〈意識〉
〈個人的無意識〉
〈集合的無意識〉
ユングは『心』の構造を、このように考えました。
ユングの言う「個人的無意識」というのが、潜在意識に当たります。
そして潜在意識(個人的無意識)の最奥に集合的無意識があることを、ユングは発見したんですね。
私の個人的な見解ですが、この「集合的無意識」の発見は、人類史上もっとも偉大な発見だと思っています。
というのも集合的無意識は、人類が『神』、『仏』、『タオ』と呼んできた「究極の真理」のことかもしれないからです。
潜在意識から集合的無意識へ
ページ内目次
集合的無意識は「存在するすべて」
シンクロニシティや、世界各国の神話や伝承の研究などを通じて、ユングは個人レベルの無意識(潜在意識)の奥に全人類共通の意識があることに気づきました。
集合的無意識によって、全人類がひとつにつながっています。
さらに言うと、人類だけではありません。
生きとし生けるもののすべてが、集合的無意識によってつながっています。
もっと言えば、無生物であるモノもまた、集合的無意識によってつながっています。
人間同士だけでなく、動物やモノとのあいだにもシンクロニシティは起こるからです。
つまり、この宇宙に存在するすべてが集合的無意識によってひとつにつながっているということです。
おそらくこれが、人類がずっと『神』や『仏』や『タオ』と呼んできたものの正体であると、私は考えています。
※『仏』という言葉の本当の意味は「悟りをひらいた人」なのですが、日本では一神教の『神』と同義語として扱われることが多いため、当サイトでは『仏』も究極の真理をあらわす言葉として使っています。
集合的無意識は科学ではない――だからこそ『神』かもしれない
集合的無意識は、人類史上もっともすごい発見である可能性が高いです。
ですが、正式な科学ではないという意見が強く、疑似科学とされています。
ユングが発表した当時においても、オカルトのたぐいとみなされ、否定的にとらえられていました。
それもそのはずで、集合的無意識はこの世のどこにもありません。
現代の科学において『心』は脳にあると考えられていますが、脳のどこをさがしても集合的無意識に該当する場所は見つかりません。
潜在意識(個人的無意識)の場合は、なかをさぐって抑圧を引きだすことができます。
また、暗示をかけることによって、あやつることができます。
そのため、潜在意識は科学や学問として研究することが可能です。
ですが、集合的無意識の場合は、さぐることも、人為的に使うこともできません。
つまり、科学的にその存在を証明することは不可能だということです。
だからこそ集合的無意識は、究極の真理(神=仏=タオ)である可能性が高いと、私は思っています。
究極の真理は人知を超えており、人間の知能ではどうやっても知ることができないからです。
※こちらをご参照ください
シンクロニシティが起こるのは、私たちがつながっているから
この世界のすべてが、集合的無意識によってつながっています。
そして、たがいに関連し合っています。
関連し合っているので、シンクロニシティが起こります。
シンクロニシティとは、「意味のある偶然の一致」のことです。
日本では『共時性(きょうじせい)』や『同調』などと訳されています。
つまり、「単なる偶然では片付けられない、すごい偶然の一致」のことです。
もっとわかりやすく言うと、「都合(つごう)のいい偶然」のことです。
そんな都合よく――
こんなことってあるのか――
出来(でき)すぎてるだろ――
というような偶然は、みなシンクロニシティに該当します。
- しばらく会っていない友人のことを考えていたら、とつぜん、その友人から電話がかかってきた――
- 手伝ってくれる人をさがしていたら、偶然にも必要なスキルをもっている人と知り合いになった――
- 『三国志』に興味をもちはじめたら、地元の書店がとつぜん「三国志フェア」をはじめた――
こういったことはみな、シンクロニシティです。
おそらくほとんどの人が、なんらかのかたちで体験していると思います。
潜在意識を介することでシンクロニシティは起こる
潜在意識のもっとも奥深いところに、集合的無意識はあります。
潜在意識と集合的無意識は、密接につながっています。
それはつまり、人は『心』の奥深いところで「存在するすべて」とつながっている、ということです。
そして、潜在意識をとおせば、シンクロニシティ(都合のいい偶然)が起こりやすくなります。
実際、「祈り」や「自己肯定暗示」などによって潜在意識に正しく願望を伝えている人は、シンクロニシティをたびたび経験します。
たとえば、願望を実現するにあたって、あなただけでは不可能な場合――誰かの助けが必要な場合、あなたの潜在意識(個人的無意識)は集合的無意識にリクエストをします。
リクエストを受けた集合的無意識は、あなたを助けることができる人を見つけだし、あなたと出会うようにしむけます。
それが「シンクロニシティ」となってあらわれるのです。
集合的無意識と願望実現
潜在意識には願望を実現する『力』があることを、多くの人が気づいています。
成功哲学、成功法則、引き寄せの法則などと言われている願望実現の理論は、「潜在意識への暗示」を活用しています。
そして、潜在意識に願望を実現する『力』があるのは、集合的無意識とつながっていることが大きいと言えます。
※成功哲学や引き寄せの法則では「思考は現実化する」という理論を説いていますが、実際に現実化するのは『思考』ではなく『想い(感情をともなっている思考)』です。
詳しくはこちらをご参照ください
(当サイトの別記事 自己肯定暗示でうつを克服するまで より)
ここで理解しておくべきことは、
「集合的無意識は、人の思いどおりにはできない」
ということです。
集合的無意識は、シンクロニシティを起こすことができます。
そのため、集合的無意識に関する話をすると、
「集合的無意識に命令する方法を教えてください」
「どうすれば、集合的無意識にやらせることができますか」
という質問をしてくる人がいます。
むりです。
人間のちっぽけな『心』では、宇宙全体の意識である集合的無意識を思いどおりになんてできません。
集合的無意識があなたのために動いてくれるかどうかは――あなたに有利なシンクロニシティが起こるかどうかは、集合的無意識しだいです。
それは、かならず理解しましょう。
地道な努力が真の成功法則
人が「心の力」を活用できるのは、潜在意識までです。
それよりも高次の意識(集合的無意識)には、直接的に働きかけることはできません。
ですが、潜在意識に正しく成功を暗示し、願望を実現させるためにあなたが努力をおしまないのであれば、そのときは集合的無意識が味方になってくれる可能性が高くなります。
天は、みずから助くる者を助く――
その言葉は、まぎれもない真実なのですから。
※関連しているお話
※願望実現(成功)に関するほかのお話