三人称小説の基本は「中立の視点」です。
じつを言うと、中立の視点を使わなくても三人称形式で書く方法はあるのですが……
※その方法については、こちらの記事の終盤にある 「中立の視点」を使わずに三人称小説を書く方法 をご参照ください
→三人称形式で、複数の登場人物の視点をあやつる
でもやっぱり基本は「中立の視点」です。
三人称形式で小説を書くのであれば、中立の視点による文章表現を身につけていることが大前提になります。
今回は、
「中立の視点による描写のしかた」
について、お話しいたします。
中立の視点(客観視点)で文章を書く
中立の視点というのは、
「登場人物の誰でもない、客観的な視点」
のことです。
登場人物たちを外側から見ている視点であり、映画やドラマで例えると「カメラの視点」になります。
中立の視点 = 客観視点 = カメラ視点
その視点で描写をするには、どうやって書けばいいのでしょう?
その問いにひと言で答えると、
「ふつうに書く」
ということです.
ページ内目次
・「中立の視点」は物語を書くうえでの基本
登場人物の視点に合わせた描写では、その登場人物の主観が少なからずはいってくるので、文章にも影響がでます。
たとえば、『スピードでパワーファイターに勝つ』の作中に、
↓こんな描写があります。
※第一章 サークリングが通用しない より抜粋。
※『スピードでパワーファイターに勝つ』は長編のボクシング小説です。現在はWEB小説として『月尾ボクシングジム物語』というサイトで公開しています。
→『スピードでパワーファイターに勝つ』 目次ページ
カツオと大賀烈(おおが れつ)のスパーリングを描写している場面なのですが、ここはカツオを応援している立場――カツオの先輩である星乃塚秀輝(ほしのづか ひでき)の視点で描写しています。
そのため、星乃塚の主観が文章に微妙な影響をおよぼしています。
という文がありますが、「懸命に耐えている」という表現は、カツオを応援する立場を意識して書いています。
この部分を中立の視点(客観視点、カメラ視点)に徹して描写した場合は、
という表現になります。
「あれ? なんだか、味気(あじけ)ない表現になったような気がするなぁ……」
と思った人もいるかもしれませんが――
そうです、それが「中立の視点」による描写です。
客観的な事実だけを書く――
というのが、中立の視点による描写です。
そのため、登場人物の心情であったり、作家の癖(くせ)や個性といったものは文章にほとんど反映されません。
いわゆる「ふつうの書き方」になるんですね。
小説修行をはじめたばかりの人は、「中立の視点」で書くことを意識して習作(しゅうさく)にはげむことをお勧めします。
※習作というのは、「練習のために作品をつくること」です。
はじめから「人に読んでもらう作品」をつくるのではなく、習作を積み重ねたうえで、それから本格的な創作活動にはいりましょう。
僕の経験から言って、そのほうが成功への近道だと思います。
修行期間(習作にはげんでいる時期)に、中立の視点で書く練習を積み重ねておくと、創作活動のプラスになるからです。
「中立の視点」で小説を書いた場合、文語体による描写がメインになります。
文語体というのは、
「(日常の話し言葉とはちがう)文章上の言葉の使い方」
のこと。
いわゆる「書き言葉」ですね。
といった感じで、文語体(書き言葉)は言いまわしが少し堅(かた)いです。
作家を志している人は、「文章による表現」ができて当たり前なので、「文語体で書けること」が大前提になります。
中立の視点で物語を書く練習をすると、文語体による表現が自然と身につきます。
初心者の習作にぴったりだと思います。
※口語体(話し言葉)と文語体(書き言葉)――言葉のちがいをひとつひとつ調べて覚えるより、プロの作家が書いた三人称小説を摸写(もしゃ)したほうが、より早く、より確実に、文語体による言葉の使い方を覚えることができます。
※摸写のやり方については、こちらをご参考ください。
→模写(もしゃ)は、優れた文章練習法
中立の視点で物語を書いた場合、
というかたちになると思います。
※モノローグについては、こちらをご参考ください
→小説でモノローグを表現する
おそらく最初のうちは、「あらすじを長々と書いている」といった感じの、無個性な味気のない文章になってしまうと思います。
最初のうちは、それで良いと思います。
登場人物の視点(登場人物の立場)からは表現せず、中立の視点に徹して文章を書く――
それを積み重ねることによって、客観的に表現する方法が巧(たく)みになります。
その結果として、「語るより見せろ」が自然とできるようになってくるんですね。
「語るより見せろ」というのは、エンターテイメント系の小説で古くから言われている格言です。
登場人物の心理や情景などを「言葉で説明する」のではなく、
賛否両論ではあるのですが、一般的に「語るより見せろ」は物語を表現する方法としてより好ましく、より高度であるとされています。
「語るより見せろ」ができるようになると、物語を創作するうえで強力な武器になります。
早い段階で身につけておいたほうが、絶対いいに決まってますよね(笑
三人称形式で小説を書く以上は、「中立の視点」で文章を書くスキル(技能)を身につけておく必要があります。
ぶっちゃけ、中立の視点を使わなくても三人称小説を書く方法はあるのですが……
とはいえ「書けないから」という理由で書かないのと、「書けるけど、あえてちがうやり方をしている」という場合では、質がまったく異なります。
とうぜん作品の出来(でき)も、まったくちがうものになります。
スポーツと同様に、小説においても「基本」が大事です。
中立の視点で書く練習を積み重ねて、三人称小説の基本をしっかりと身につけましょう。
それは、あなたの創作活動を支える土台になります。
次のお話を読む
※視点に関するほかのお話
→三人称形式とは? いまさら人に聞けない小説の基本
→「神の視点」という小説の表現法
→三人称小説で、登場人物の視点で描写する方法
→「登場人物の視点」と「中立の視点」を組み合わせて書けるのが三人称形式
→三人称形式で、複数の登場人物の視点をあやつる
→「主人公ではなく、ほかの登場人物の視点で描写する」という小説表現法
→一人称形式(一人称一視点)で小説を書くメリット
※よろしければこちらもご参考ください
→模写(もしゃ)は、優れた文章練習法
→小説でモノローグを表現する
→文章の基本 (ラベル)
→文章のテクニック (ラベル)
→小説作法(小説の書き方) (ラベル)
更新
2018年11月23日 12月1日、7日、14日 リンクを追加。
「中立の視点」の文章の書き方
登場人物の視点に合わせた描写では、その登場人物の主観が少なからずはいってくるので、文章にも影響がでます。
たとえば、『スピードでパワーファイターに勝つ』の作中に、
↓こんな描写があります。
************
烈は、ショートフックの連打をカツオに浴びせかけていく。
カツオはガードを固め、懸命に耐えている。
防戦一方のカツオ――
そのとき、ラウンド終了のブザーが鳴った。
カツオはガードを固め、懸命に耐えている。
防戦一方のカツオ――
そのとき、ラウンド終了のブザーが鳴った。
※第一章 サークリングが通用しない より抜粋。
※『スピードでパワーファイターに勝つ』は長編のボクシング小説です。現在はWEB小説として『月尾ボクシングジム物語』というサイトで公開しています。
→『スピードでパワーファイターに勝つ』 目次ページ
************
カツオと大賀烈(おおが れつ)のスパーリングを描写している場面なのですが、ここはカツオを応援している立場――カツオの先輩である星乃塚秀輝(ほしのづか ひでき)の視点で描写しています。
そのため、星乃塚の主観が文章に微妙な影響をおよぼしています。
カツオはガードを固め、懸命に耐えている。
という文がありますが、「懸命に耐えている」という表現は、カツオを応援する立場を意識して書いています。
この部分を中立の視点(客観視点、カメラ視点)に徹して描写した場合は、
カツオはガードを固めて耐えている。
という表現になります。
「あれ? なんだか、味気(あじけ)ない表現になったような気がするなぁ……」
と思った人もいるかもしれませんが――
そうです、それが「中立の視点」による描写です。
客観的な事実だけを書く――
というのが、中立の視点による描写です。
そのため、登場人物の心情であったり、作家の癖(くせ)や個性といったものは文章にほとんど反映されません。
いわゆる「ふつうの書き方」になるんですね。
中立の視点で書く練習からはいるのが成功への近道
小説修行をはじめたばかりの人は、「中立の視点」で書くことを意識して習作(しゅうさく)にはげむことをお勧めします。
※習作というのは、「練習のために作品をつくること」です。
はじめから「人に読んでもらう作品」をつくるのではなく、習作を積み重ねたうえで、それから本格的な創作活動にはいりましょう。
僕の経験から言って、そのほうが成功への近道だと思います。
修行期間(習作にはげんでいる時期)に、中立の視点で書く練習を積み重ねておくと、創作活動のプラスになるからです。
文語体の表現が身につく 〈中立の視点で練習する効果①〉
「中立の視点」で小説を書いた場合、文語体による描写がメインになります。
文語体というのは、
「(日常の話し言葉とはちがう)文章上の言葉の使い方」
のこと。
いわゆる「書き言葉」ですね。
~じゃない(口語体)
~ではない(文語体)
~ってことは(口語体)
~ということは(文語体)
~なんだ(口語体)
~なのだ、~なのである(文語体)
~ではない(文語体)
~ってことは(口語体)
~ということは(文語体)
~なんだ(口語体)
~なのだ、~なのである(文語体)
といった感じで、文語体(書き言葉)は言いまわしが少し堅(かた)いです。
作家を志している人は、「文章による表現」ができて当たり前なので、「文語体で書けること」が大前提になります。
中立の視点で物語を書く練習をすると、文語体による表現が自然と身につきます。
初心者の習作にぴったりだと思います。
※口語体(話し言葉)と文語体(書き言葉)――言葉のちがいをひとつひとつ調べて覚えるより、プロの作家が書いた三人称小説を摸写(もしゃ)したほうが、より早く、より確実に、文語体による言葉の使い方を覚えることができます。
※摸写のやり方については、こちらをご参考ください。
→模写(もしゃ)は、優れた文章練習法
「語るより見せろ」が身につく 〈中立の視点で練習する効果②〉
中立の視点で物語を書いた場合、
地の文はすべて文語体(書き言葉)――
口語体(話し言葉)は、かぎ括弧でとじられた登場人物の台詞(せりふ)と、モノローグだけ――
口語体(話し言葉)は、かぎ括弧でとじられた登場人物の台詞(せりふ)と、モノローグだけ――
というかたちになると思います。
※モノローグについては、こちらをご参考ください
→小説でモノローグを表現する
おそらく最初のうちは、「あらすじを長々と書いている」といった感じの、無個性な味気のない文章になってしまうと思います。
最初のうちは、それで良いと思います。
登場人物の視点(登場人物の立場)からは表現せず、中立の視点に徹して文章を書く――
それを積み重ねることによって、客観的に表現する方法が巧(たく)みになります。
その結果として、「語るより見せろ」が自然とできるようになってくるんですね。
「語るより見せろ」というのは、エンターテイメント系の小説で古くから言われている格言です。
登場人物の心理や情景などを「言葉で説明する」のではなく、
登場人物の演技(動作や仕草)
演出(舞台効果)
演出(舞台効果)
それらを使って表現するやり方のことです。
賛否両論ではあるのですが、一般的に「語るより見せろ」は物語を表現する方法としてより好ましく、より高度であるとされています。
「語るより見せろ」ができるようになると、物語を創作するうえで強力な武器になります。
早い段階で身につけておいたほうが、絶対いいに決まってますよね(笑
「中立の視点」は物語を書くうえでの基本
三人称形式で小説を書く以上は、「中立の視点」で文章を書くスキル(技能)を身につけておく必要があります。
ぶっちゃけ、中立の視点を使わなくても三人称小説を書く方法はあるのですが……
とはいえ「書けないから」という理由で書かないのと、「書けるけど、あえてちがうやり方をしている」という場合では、質がまったく異なります。
とうぜん作品の出来(でき)も、まったくちがうものになります。
スポーツと同様に、小説においても「基本」が大事です。
中立の視点で書く練習を積み重ねて、三人称小説の基本をしっかりと身につけましょう。
それは、あなたの創作活動を支える土台になります。
次のお話を読む
※視点に関するほかのお話
→三人称形式とは? いまさら人に聞けない小説の基本
→「神の視点」という小説の表現法
→三人称小説で、登場人物の視点で描写する方法
→「登場人物の視点」と「中立の視点」を組み合わせて書けるのが三人称形式
→三人称形式で、複数の登場人物の視点をあやつる
→「主人公ではなく、ほかの登場人物の視点で描写する」という小説表現法
→一人称形式(一人称一視点)で小説を書くメリット
※よろしければこちらもご参考ください
→模写(もしゃ)は、優れた文章練習法
→小説でモノローグを表現する
→文章の基本 (ラベル)
→文章のテクニック (ラベル)
→小説作法(小説の書き方) (ラベル)
更新
2018年11月23日 12月1日、7日、14日 リンクを追加。
2024年7月21日 ページ内目次を追加。文章を一部改訂。